平行線 ページ44
「何度も言うけど、私は鬼兵隊には残らない」
「それに俺は頷いてねェ」
…私が意図的に溜め息混じりに言った言葉に、晋助はそう返す。私達は平行線のままだ。ここに来たときから、私達の意見がどちらかに譲歩されようとしたことは一度もない。ひたすらに自身の意思を持ち続け、それを曲げようとはしていない。晋助は私のことをどうしたってここに残そうとしていて、私はどうしたって真選組を選ぶのだ。晋助は自分の意思を変えない。彼がその意思を変えたところを、私は見たことがない。一度何かを見据えたなら、その他に何も見えなくなったみたいにその目的に向かって突き進むような奴なのだ。その背中を、私はずっと追い続けてきたから分かる。
だからきっと、何を言ったって私を諦めてはくれないのだろう。そう簡単に諦めてくれたなら、こんな状況にはなっていない。もっと平和に、円滑に事態は回っていたはずだ。けれど私も、私の意思を曲げるつもりなんてこれっぽっちもない。
…私の意思は、私の感情が決めることだ。私は私の勘定を無視することなんて出来ない。私は、真選組に居たいと、強く望んでいるのだ。その望みに見ないふりなんて出来るわけがない。
…目の前で私を見据える彼の手を、私は掴みに行きたいから。
「…離して」
「お前が諦めるなら、ここに残ると決めるなら、離してやってもいいがな」
「そんな未来には興味ないよ」
断言するように、その思いを晋助に宣言するように、私は言う。
「私は真選組副長補佐なの。私は、その名前でありたいんだよ」
…土方さんの方に目を向けながらにそう続けると、土方さんは私の目をしっかりと見据えていて、顔を強ばらせながらも小さく笑って見せた。
…晋助は私に回した腕に僅かながら力を入れて。その分少しだけ息苦しくなったような気がして、眉を一瞬寄せた。
「…紅の舞姫の名は捨てると？」
「そういうことじゃない」
…正直、捨ててしまいたいとも思うけれど。もし、戦争時代の記憶を。幾つもの大切なものを失った記憶を消せる手段が目の前にあったとしたら。それにすがってもいいのだと言われてしまったら、私はそれに、手を伸ばそうとするのだろうけれど。『紅の舞姫』の名前は、忘れたい記憶の一部であり、私の中で大きな存在としてある自分自身だ。そんな名前は、捨ててしまいたいと、思うけれど。
「…その名前に意味をくれた人が居るの。だから私は、紅の舞姫である自分を捨てるつもりはない」
…その名前に意味をくれたその人は、私の目を、じっと見つめ続けている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 511人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (
レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ！！そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ（笑）続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ！！ (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい！！土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました！！小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです！！続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです！！ありがとうございます！！ (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、！ いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!２３点って確かに容赦ない（笑）でもそれでこそこの二人だ！と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます！！ (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年4月11日 18時
