繋がると ページ41
…あの時は、本当にバカなんだと思った。伝説の攘夷志士の一人である紅の舞姫を、あんなにもあっさり受け入れるだなんて。真選組という組織だって、本気を出したら幕府ごと叩くことだって出来るかもしれない私のことを、見離さずに手を差しのべるだなんて。普通は敵だと切り離すべきだろう。もし、私が幕府を潰すためにそこに居たのだとしたら、本当にどうするつもりだったのだろう。幕府に恨みなんて積もる程なのだから、動機なんていくらでもある。けれど、そんなこと疑いもせずに、彼等は私にここに居ていいのだと言った。有り得ないと思った。私は私が紅の舞姫だということを知られたなら、彼等の元から離れることを決めていたのに。みんなは私を仲間だと言ったのだ。
…何の迷いもなく私へと手を伸ばして、血で真っ赤に汚れた私の手のひらを掴んでくれた。その手を引いて、そこに居ることを許してくれた。その時に私の居場所は、真選組になった。
…私にとって、かけがえのない居場所になったのだ。
「……それとも、私は、その手を離さなければならないんですか?」
と、私は土方さんに問い掛ける。彼はそんな言葉に少しだけ目を見開いて、けれどすぐに小さく笑って、口を開く。降参だと言わんばかりに。
「…んな訳がねェだろ、お前を副長補佐にしたのは俺だ」
「私が居ないと困りますもんね?」
「あァ」
「寂しいですもんね?」
「あァ、寂しい寂しい」
「うわ、凄まじい適当感」
…クスクスと笑いながらそんな会話をして。私は伸ばしていた手のひらを自分の目の前に戻して、見つめる。土方さんが掴んでくれた。手のひらだ。その時の体温を、彼の言葉を思い出しては、頬を綻ばせた。じんわりと心の奥が暖まっていく。彼との会話は、こんなにも落ち着くものだったのだ。時間の流れを忘れるようなこの時間が、とても愛しい。
「…だから、」
…と、土方さんはそう呟いて、そうして今度は彼が、私へと手を伸ばす。小さく笑みを浮かべて、あの時と、同じように。
「…帰るぞ、A」
「…ッ!」
…目元が熱く熱を持って、泣きそうになって、けれどそれを拭っては笑って前を向いた。本当に彼は、私を泣かせるのがうまいこと。
…頷いて、私は手を伸ばす。足を踏み出す。彼も同じように踏み出す。
…その手を、私は掴む。彼も、私の手を掴む。その手は繋がると。
…そう、信じていた。
「…帰る?何処にだ?」
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時