【銀魂】己の行く道 交差する心【土方十四郎】

どうしたい　土方side ページ38

…この一週間と数日。Aが真選組から何の予告もなく唐突に姿を消して、それからの日々は酷く長かったように思える。いや、長かった、というよりは、時間が流れている気がしなかった、と言った方が適切かもしれない。約束していた場所にソイツが現れないまま、その時から時間が止まっていたような気がしていた。あの静かな夜に取り残されているように停滞していた。Aが何処に居るのか、どうしているのか。傷付いていないか、苦しんでいないか。そんなことを考えては、生きた心地がしなかった。当たり前のようにあるはずだったものが突然目の前から消え去って、信じていたものに呆気なく裏切られたような気分になって、凍りついたような日々だった。だから今こうして目の前にAが居て。クスクスと笑っていて、ふと目が合って。凍り付いていた時間が愛しさや安堵に溶けて、進み始めたような気がした。あの時の約束を果たすために。

Aは俺の目を真っ直ぐに見つめて、柔らかく微笑んだまま、「23点ですけど」と続ける。あまりにも真っ直ぐなその目に、目を逸らしたくなるけれど、今はもっとAを見つめているべきなのだと思う。


「でも、…嬉しいですよ、ちゃんと」

「…ちゃんとって何だよ」


…Aとこうして、下らなくて何の意味もない平和的な会話をするのも酷く久しぶりだった。ずっとこんな話をしながら、ゆっくりと散歩をするみたいに歩いて帰りたいような気になってしまうけれど、残念ながらそういう訳にもいかない。俺はひとつ、Aに聞かなければならないことがあるのだ。その質問をしないことには、先には進めない。その質問により、俺と、それからAのこれからの行動が変わってくることになるのだから。確かな躊躇いに一度口をつぐみつつ、それを振り払うように俺は口を開く。


「……そんで、お前はどうしたい」

「……どうしたい、とは？」


Aは首をかしげる。眉を寄せて、何が言いたいのか分からないと言う様子で。まぁ、今の言葉では、主語が抜けていたため分からなくても無理はない。俺は補足する。何とも思っていないように、そのことについて、実は思い詰めているなんてことに気付かれないように努力しながら。


「…真選組に戻るのか、それとも、鬼兵隊としてここに残るのか」


お前はどうしたい、と。俺は問い掛けた。その言葉に、Aは特に表情を変えることはなく、俺がそう口にして数秒のうちに、瞬きをしただけだった。

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