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器用な言葉 土方side ページ37

「…貴方に会いたいなと思ったら、本当に来てくれるんだもの」


まるでヒーローみたいに、と。Aは口にした。髪が自然に揺れて、自分でもらしくないことを言った自覚があったのか、少しだけ照れ臭そうに笑って。ほんのりと頬を桃色に染めて。嬉しそうに、安心するように、そんな感情を隠すこともしないで素直に俺に見せてくれる。その表情はなんだか、いつか、Aが俺にふと見せたものに似ているような気がした。Aが一人で、自分はもう真選組に居られないんじゃないかと杞憂していたときの事だ。

自分自身ではどうしようも出来ないような大きな不安がソイツにはあって、それを俺に打ち明けて。そうして俺が、そんな不安を抱える必要はないのだと伝えたとき。過去に何があろうと、何も変わらないのだということを伝えたとき。Aは今みたいに笑って呟いたのだ。


『貴方に会えて、良かったです』


…その時の月明かりを。Aの表情を。声を、俺は覚えていた。今のAとその時のAが重なって、やっぱりそれは俺の目を奪って。抗いようもなく心臓はドクンと俺の意思を無視して高鳴る。甘やかに、暖かく。とても心地のいい温度を纏って。


…少しの動揺を悟られないように平然を装って、俺は返す。からかうような口振りで。


「んなこと考えてたのか?」

「えぇ、ここに居る間、何度も考えましたよ」


土方さんのことを、と。何の躊躇もなくAはそう言って、予想外の返しに思わず息を詰まらせてしまう。そんな俺を見てか、ソイツはしてやったり顔を浮かべており、若干苛立つ。


「土方さんは?」

「あ?」


面白がっているように、無邪気に笑って、Aは俺に問い掛ける。


「土方さんは私に会いたくなかったんですか?」

「ッ…」


なんてことだ。再会して数分で通常運転に入ってはいないだろうか。ニタニタ笑顔は日常的に俺に見せるそれだった。「どうなんですか?んん?」とかなんとか、耳に手を添えてそう催促するソイツに舌打ちをして。髪をわしわしと乱しながらに俺は言う。吐き捨てるように。素直な言葉を口にできるほど、俺は器用に言葉を扱えない。


「…会いたかったよ、これで満足か」

「23点」

「容赦ねーなオイ!!!」


無惨な点数をつけられたのは不服だが、なんだかいつも通りな会話の流れに、そして、Aがクスクスと笑っているのを見て、なんだかどうでもいいことのように感じてしまって、苦笑のような笑みを浮かべた。

一週間と数日ぶりのAの姿に、漸く俺は心から笑えた気がした。

どうしたい 土方side→←名前を呼べば 土方side



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
- 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年4月11日 18時

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