勘 土方side ページ33
…敵を一気に斬り伏せて。敵の群れに出来た隙間を縫うようにして囲まれていたところを脱出する。大分数は減ってきていた。後ろから「追えエエエ何としても逃がすなアアア!!」という声と共に、俺を追い掛けてくる足音が幾つも聞こえてくる。が、振り返って確認することもなく、俺はひたすら前を向いて刀を右手に握って走る。身体中につけられた傷が足を踏み出して床に叩き付けるたびに衝撃が響いて痛むけれど、どうだっていい。この先に、Aは居るのだ。何処に居るのかなんて知らないけれど、きっとAの元へと繋がっているはずだ。それを思えば、どれだけ傷が痛くても何とも思わない。頬をドロリと流れる血を乱暴に拭って、痛む足をなんとか前へと突き出していく。息が切れる。肺が悲鳴を上げているように思える。
こうして全力で走っていると、タバコやめようと毎回決意するように思うのだけれど、必ずと言っていいほどその決意は数時間後には消え去っている。気付けばタバコが口にくわえられていて、火をつけた辺りであ、と思うものの、もう火はついているのだし、と吸ってしまうのだ。そうなるともう禁煙のことすら忘れていく。うまく行かないものだ。
…走ったことにより、横の腹に締め付けられるような痛みを感じる。口の中に血の味が広がる。それでも、足を止めることはしない。少しずつ俺と敵の間に距離が出来てきて、やがて声も聞こえなくなる。相手も相当体力を消耗していたのだろう。敵をまけたことは幸運だった。
「……何処だ…!?」
…通路を走りながら、俺は呟く。迷路のような船内には、外から聞こえてくる爆音がいくつもの鋼鉄の壁を隔てて聞こえていた。近藤さんや総悟は無事だろうか。そんなことを思うも、大丈夫だと信じることしか出来ない。今は、Aのことだけを考えていよう。俺がやるべきことは仲間の身を案じることではなく、仲間の一人であるAを見つけ出すこと。Aに、もう一度会うことなのだから。
…走って走って走って。小さく名前を呼びながら走って。曲がり角を曲がってみたり、角を無視して正面に進んでみたり。ほとんど勘で動いていた。けれど。
「ーーーー」
…俺のその勘は、どうやら捨てたものではないらしい。何者かの声がふと聞こえてきた。足を早める。なるべく息を殺して、気配を消すよう努力して。
そうして次の曲がり角を曲がる。声はそちらから聞こえてきていた。すると、その先には右と左に進むT字の通路になっていて。
「…ッ!!」
…その先に見つけたものに、俺は目を見開いた。
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時