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目の前に ページ31

「副長補佐、赤坂Aを返してもらう」

「…ひ、じかた…さん…」


…呼吸をすることを忘れるくらいに。瞬きをするのを忘れるくらいに。私は驚いていた。目を見開いて、彼の背中を呆然と見つめる。本当なら腕で目を擦って確認したいところだけれど、腕を動かすことも億劫であった。けれど、確かに、彼は、土方さんは、私の目の前に立っている。私を敵から庇うように、そこに立っているのだ。諦めたくないと、悔しくて滲んでいた涙が、形を変えて溢れてくるのが分かった。視界がぼやけて、クリアになったと思ったら頬に熱を持ったものが流れていった。顎に伝っては床に落ちていく。そんなものが気にならないくらいに、私は彼の背中に見とれるように見つめていた。

…いつだって私を護って、導いてくれた背中だ。その背中があれば、私は大丈夫だと思えた背中だ。安心して、更に涙が零れていく。


…私の目の前に、土方さんがいる。


「……悪りィ、遅くなった」

「ッ…ほんと、ですよ…」


遅すぎます、と。私は彼の言葉にせめてもの強がりでそう返した。彼はもう一度、悪りィと呟いた。その声にも、微かな安堵が窺えた気がした。

土方さんが斬った男の後方に居たソイツらは、彼の登場に酷く混乱している様子で。


「し、真選組副長、土方十四朗…!?」

「…うちの補佐が随分世話になったな」


…土方さんはそう言いながら、自身の刀についた赤色を振り払った。その銀色はどれだけの血を吸ってきたのだろう、真っ赤に染まっていた。


「…こりゃ、それ相応のお返しをしなきゃなんねェらしい」

「…ッ、クソッ…!!全員斬り掛かれェェェェ!!」


彼の元に残りの数十人が纏めて飛び掛かる。何本もの銀色が彼に向けられる。彼も相当体力を消耗しているというのに。


「土方さん…!!!」


私の声が響く。土方さんは躊躇うことなく刀を握り直しては、流れるようにそれを振るう。

…その剣はやっぱり、力強くて真っ直ぐで、迷いなんて一切感じられない。彼の美しいともいえるその剣は、瞬く間に敵を斬り伏せていく。


「あァァァァァァ!!」


最後の一人がやけくそと言わんばかりに刀を振り回す。けれど、そんな粗削りな剣が彼に届くはずもなく。


「ッおらぁぁぁぁぁ!!」


…銀色の軌道を描いたその剣に斬られ、その一人はバタンッと倒れた。そこに立っているのは土方さんだけで、その他は私しかいない。


…肩を上下させながら、彼は私に背を向けている。再度刀を振って赤色を払ってから、それを一度鞘に納めて。


…そうして彼はゆっくりと、こちらを振り向いた。

間違いなく 土方side→←会いたい



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
- 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年4月11日 18時

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