伝えたくて ページ4
…小太郎は、辰馬は、銀時は。真選組の皆は、土方さんは。彼等は、私に会うために、ここに来たのだと小太郎は言った。まるで、私に判断を委ねるように。私がどの道を行こうと、どんな人生を歩もうと、止めも責めもしないと。そんなことは関係なしで、ただただ、私に会いに来たのだと。そう言った。それだけのために、彼等はここに来た。旧友達が集まった。私に会うためだけに。ただ、それだけのために。小太郎は、やっぱり分かっていたんだ。私が迷うことを。真選組の鬼兵隊で揺れることを。どちらが正解なのか、どちらに居るべきなのか、分からなくなることを。
それは私にとって、晋助がどんな存在かをよく知っているからかもしれないし、もっと違う理由があるのかもしれない。もしかしたら、土方さんも銀時も、その可能性に思い当たっているかもしれない。二人は、分かっているような気がした。
…もしかしたら私は、鬼兵隊を選ぶのかもしれない。そんな可能性に気付いていながら、それでも彼等が諦めないのは。今も必死に、戦い続けているのは、私にもう一度、会うためだった。私が晋助に会うために今までを生きてきたのと同じように。
…ドクン、ドクン、と。心臓が高鳴っている。無音になった無線機を呆然と見つめながら。もう何の音もしない無機質なそれを、見つめながら、遠くから聞こえてくる声を聞いている。先程よりも少しだけ、その声は近付いたかもしれない。まだ私のことを呼んでいる。私の名前を叫んでいる。
…土方さんが、私の名前を呼んでいる。
…私にもう一度会うために、叫んでいる。
…私の名前を呼ぶ声が、聞こえる。
「……さ…」
…あぁ、やっぱり。私の中で、あの人は特別だ。彼に名前を呼ばれていることが。彼が私に会いたいのだと願いながら叫んでいることが、こんなにも、私を突き動かすのだ。視界がどうしようもなく眩んで、何も見えなくなりそうだ。想いの分だけ、涙は溢れてくる。
…溢れて溢れて、止まらなくなる。
「ーーー土方さん!!!」
どうしてだろう。
彼の声は、いつだって、私に前を向かせてくれる。
涙を拭って、息を吸い込んで、私は叫ぶ。ありったけの想いを一気に吐き出すように、叫ぶ。
…私の虚勢を。私の弱さを。私の痛みを。見付けては優しく撫でてくれた人の名前を。
…かじかんだ心ごと抱き締めてくれた、愛しい人の名前を。
「私は、ここです!!!」
…貴方の想いが。貴方の言葉が。貴方の体温が。今も私のことを護ってくれている。そのことを伝えたくて、私は叫ぶ。
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時