励ます言葉 ページ27
…斬っては前へ。斬っては前へ。刀はもう血塗れになって真っ赤に染め上げられていて、その滴る程の赤を振り払う時間すら、ソイツらは与えてくれなくて。私は息を切らしながら、それでも銀色を振るっていた。それを振るうたびに鮮やかな赤色が飛び散って、けれどその飛び散っていった赤色には、きっと私のものも含まれていて。それを選別することなど出来はしない。もう何人敵を斬り伏せたか分からないけれど、私自身の身体にもどれだけの傷が付いたか分からない。身体中が痛くて、今にも立ち止まって痛みに悶えたくなるけれど、そんな暇があるわけがない。痛みなんてどうってことないんだと自分に言い聞かせるように、私は笑った。無理矢理に口角を上げた。
敵を斬った。背中を斬られた。背中を斬った奴を斬った。直ぐ様肩辺りに誰かの刀が近付いてきて、次にそれを止める。ソイツを蹴り飛ばして走ろうとするけれど、足がもつれて転びかける。
…あぁ、やっぱり、思っていた以上にこれはヤバい。
「…はぁぁあ……容赦ないわぁ…」
…ははっ、と。渇いた声を私は漏らす。息を吸い込めば血のにおいがして、むせ返りそうになる。嘆いてみたけれど、それはこの場の喧騒に紛れて聞こえいく。もし仮に、誰かが私の声を聞いていたとして。けれどだからといって見逃してくれる訳がない。どの道、現状を打破することは不可能だった。
…相手は雑魚とはいえ鬼兵隊に所属する隊士だ。そりゃあ当然選りすぐりのメンバーが揃えられている訳で。個人の実力で言えば当然私の方が上だと自信を持って言えるけれど、それなりの奴等が束になっているのだ。塵も積もれば山となる、ということだ。塵の積もった山は、私個人の実力を覆してしまうのかもしれない。既に傷だらけの私は、もしかしたらこのまま、殺されてしまうかもしれない。殺されなくとも、ズタズタにされて後戻りなのかもしれない。けれど。
…けれど、だからといって、逃げられないんだよ。
「土方さんッ…!!!」
…だって、だって彼に会いたいから。土方さんに、伝えなければならないことがあるから。
…私の望みを、まだ叶えて貰っていないのだから。
…大丈夫。大丈夫、と。私は小さく呟く。それは、私自身を励ます言葉。
……貴方が居るなら、怖くない。
「…あアアアアアア!!!!」
叫びながら、私は一人敵をまた斬り伏せる。次の敵にまた向かう。けれど。
…ふらり、と。足元が遂にふらついて、立っていられずに膝を床についてしまった。
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時