遠い場所 ページ26
…ここ最近は討ち入りもあまりなかったし、その上鬼兵隊の船に滞在していたときはかなり穏やかな生活をしていたせいか、刀を思いきり振るうのも、人の肉を斬り裂くのも酷く久しぶりに思えた。独特の感覚が刀を伝って感じられて、少しだけ眉を寄せた。やはり、あまり気分のいい感覚ではない。戦闘に夢中になれば何てことはないけれど、ノリに乗るまでは嫌悪感を感じ続けることになる。出来ることなら穏便に、争いなんてなく優雅に歩いていきたいものだけれど、そう簡単に行かないのが人生というものであり、そして敵地でそんなことは言っていられない。交渉の余地がないことは分かりきっている。分かっていることを口にしていたって仕方ない。
バタバタと斬った男達が私の目の前で血を噴き出しながらに倒れていく。あっという間に辺りは真っ赤に染まり、私自身にも返り血が付着した。早くもシャワーを浴びたい。他の男達はそんな光景を目にして、顔を強ばらせている。
そんな奴等に渇を入れるように、その中での中心人物である男は叫ぶ。
「怯むなアアア!!紅の舞姫を止めろオオオオ!!!」
その声に背中を押されるように、ソイツらはわあああ!!!と声を上げながらこちらに迫ってくる。怖じ気づいている暇はない。一歩でも前に進まなければならない。私は鉄の床を蹴りあげるようにして駆け出す。私へと容赦なく叩きつけられようとする無機質な光を帯びた銀色を自分の銀色で止め、それを弾くように払ってはソイツのどてっ腹を足の裏で思いきり蹴飛ばした。ソイツは後方へと倒れ、その後ろに居た奴等を巻き込んでいく。ソイツらを踏みつけるように足を踏み出して、次に掛かってくる奴を相手にする。
まとまっていない長い髪の毛が動くたびに揺れて少し邪魔くさいけれど仕方ない。今は髪を束ねるリボンがないのだから。頬にくっついた髪に構うことなく、敵を蹴散らしていく。
「そこを退けって、言ってるでしょ!!!」
…目の前の敵を斬って、それと連動するように身体を捻っては後ろに迫る敵を斬る。斬っても斬っても沸いて出てくるように敵が現れてキリがない。なんとか道を開いて進むけれど、すぐにその道を塞ぐ誰かが現れる。その繰り返しだった。
焦りが募る。こんな雑魚を相手取っている場合ではないのに。
「ッりゃあああああ!!!」
鉄と鉄がぶつかり合う鋭い音や、叫び声が鉄の空間には響いていて、周囲は殺伐としている。こんな夜でも、きっと空では関係無いと言わんばかりの月が、気高く輝いているのだろう。そんな景色が、今は酷く遠い場所にあるような気がした。
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時