【銀魂】己の行く道 交差する心【土方十四郎】

健闘を祈る ページ24

…真選組に帰ることが、土方さんに会うことが、何よりも優先すべき私の目的だけれど。それが私の望みだけれど。このまま彼等と合流して、逃げ去ってしまうこともきっと不可能ではないけれど。けれど、それではいけないのだと思う。このまま帰る訳にはいかないと、過去の私が、晋助を救えなかったあの頃の私が叫んでいる。晋助と、ちゃんと話をするべきだと。それで何かが変わることはないけれど、変えられることはないけれど、そうした方がいいのだと漠然と思う。このまま、終わりにすることは許されない。私自身が、それを許すことが出来ないのだ。それじゃ、あの頃の私と、何も変わらないから。何も出来なかった私から、一歩も進めていないような気がするから。

…だから、晋助に会いに行かないといけない。話をしないといけない。彼はこの船の何処かにいるはずだ。


…再び前を向いて。刀を握り直して。私は口を開く。


「じゃあね、総督様の右腕さん」


空いている左手をひらりと振りながら、私は歩き出す。仲間達へと繋がる道を。晋助へと繋がる道を。真っ直ぐに歩いていく。そんな私の背中に向かって、万斎は言う。変わらず平坦で、物静かな声で。


「健闘を祈るでござる」


そんなことを言われ、私は声に出さずに笑ってしまう。健闘を祈る、だなんて。一応敵対している人間に言うべき言葉ではない。万斎は私と敵対しているのかと問われると少し違うような気がするけれど、組織的に見れば私達は敵対しているのだから。失敗して、追い詰められて、敗北してしまえばいいと言い放つべきだと私は思う。その言葉を敵から貰ってしまったことがなんだかおかしくて、口角を上げてしまった。健闘を祈られてしまったのだから、もう何とか切り抜けるしかないだろう。その言葉に答えるように、調子に乗って左手の親指を立てて見せた。

…そうして私は、歩く速度を早めてはそのまま走り出す。足音が聞こえないため、裸足なのは救いでもあり、こんな足で戦えるのかという不安もあるけれど、まぁいい。きっと戦闘になればこんな不安は忘れて、構わず私は足を振り上げることだろうから。


曲がり角を曲がって、真っ直ぐに進んで、その先には階段があってそこを下る。船の構造は大体把握している。どの通路を通れば出口に迎えるのか、この船で滞在するに当たってもう調べあげていた。だから確実にこの階段を下れば出口に近付く。それは分かっていたことだった。けれど。


「……やーっぱこうなるよね」


…出口に近付くということは、つまり同時に、敵に遭遇する、ということだ。

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