質問 ページ18
…万斎がどうだろうと、ソイツがどんな意図で動いていようと、晋助は確かに私を鬼兵隊に居させるべく兵士達を使っている。下っぱ達が晋助に命じられて、それを背くようなことはしないだろう。晋助の思う結末を迎えるために、大勢の人間が私に銀色を向けてくることは目に見えている。万斎のように、快く見送ろうと思う物好きは確実に居ないだろう。忠告されなくとも容易く予測できることだ。いや、予測するまでもないか。そのために武市から刀を奪ってきたのだから。その勢力に対抗するために。これから迫り来るだろう敵を思い、大きな波のように押し寄せてくるシーンを頭でイメージしては、なんだかげんなりして溜め息が小さく漏れた。
けれどその波を掻き分けないことには出口が見えないのだから仕方がない。それを抜けないことには、彼等に会えないのだから、やるしかない。先程からずっと何故か笑みを浮かべている万斎を一瞥し、私は足を踏み出す。裸足のため、ひたり、という静かな音が微かに聞こえた。例えるなら、静かな場所の水溜まりに雨の雫が落ちたような、そんな音だった。
「…じゃ、話が終わったならもう行くよ」
そう呟いては数歩、そんな音を立てながらに歩き、万斎の横を素通りする。もしその瞬間に斬り掛かられたら、必ず返り討ちにしてやろうと心に決めながら。が、そんなことはやはりなく、その代わりにソイツは口を開く。私は足を止める。
「ひとつ聞いていいか」
「…あまり話してる暇はないんだけど」
「そなたは拙者に質問をした、なら、拙者の質問に答える義理はあるでござろう?」
急かすように、不満を漏らすように言うも、そう言われてしまい押し黙る。肩越しに振り向き、「何よ」と私は問い掛ける。万斎はこちらに視線を寄越さないまま、壁に寄り掛かった体制で床を見据えながらに続ける。
「…何故、あの二人を殺さなかった?」
…その質問は、先程も武市に聞かれたものだ。一呼吸ほどの間をおいて、呆れたように、そういう風に意図した声で「だーかーらー」と、私は呟く。顔を再び正面に向けながら。
「それが私の目的じゃないし、警察手帳も…」
「本当に、そんなことが理由でござろうか?」
…私の言葉を遮るように響いたその声に、私はまた黙らされてしまう。コツリ、と音がして、ソイツが私の背中を見据えたのが分かった。サングラスの下にあるその目で、確かに私を見据えている。
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ!!そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ(笑)続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい!!土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました!!小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです!!続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです!!ありがとうございます!! (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、! いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!23点って確かに容赦ない(笑)でもそれでこそこの二人だ!と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます!! (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月11日 18時