【銀魂】己の行く道 交差する心【土方十四郎】

矛盾 ページ17

…どうして私のことを止めないのか。どうして私に剣を向けないのか。そればかりが疑問だった。また子も武市も、晋助のために。晋助の望む結末のために私に挑んできたのに。二人以外の兵士達も、そのために今も戦い続けているのに、万斎だけがそのために動いていない。それどころか、部屋を飛び出して晋助の望まない結末へと走り出そうとしている私を見送りに来たのだと言うのだ。万斎の意図が分からない。ただただ、私を見送りに来たというのが本質ではないように思える。そんなシンプルな理由で、まるで、私に味方をするような、晋助を裏切るようなことをするだろうか。ソイツがそんなことをするなんて、有り得るだろうか。

…万斎が口にしたことがすべて嘘で、次の瞬間に周囲が敵で囲まれたら、なんてことを考えて意識を研ぎ澄ませているけれど、特に気配も感じない。私と万斎以外には、誰もいない。


…私に斬り掛かる理由こそあれど、見送る理由なんてない。訳が分からない。実はソイツに、晋助への忠誠心のようなものはないのだろうか。だとしたらまぁ納得できるけれど。勝手にそんな結論を導き出していれば、万斎は語り出す。


「…そなたを止めることは、晋助の望むことではないからでござる」

「…は？」


と、万斎は口にした。決まりきった法則を答えるように。当然の言葉を口にするように自然に。けれど、私は更に分からなくなる。


「…晋助は、私をここに留めておきたいんじゃないの？」

「その通りでござる」

「なら、矛盾してるよ」

「そう、晋助は、矛盾している」


それに、気付けないでいるのでござるよ、と。なんだか呆れるように言うソイツは、なんだか色々なことを既に見据えているように見える。サングラスに隠されたその目は、一体何を映しているのだろう。少なくとも、私が見ているものとは、まったく違うものを見ていることは確かだった。


「…よく、話が見えないんだけど」

「まぁ、そなたが理解する必要はない。それに、晋助もすぐに気付くだろう。自分の矛盾に」


どうやら、答えを濁したまま教えてはくれないらしく「兎に角、拙者はそなたの邪魔はしないでござる」と。なんの答えにもなっていないけれど、「あっそ」と返すしかない。邪魔をしないなら、それに越したことはない。


「…だが、そなたが行くその先には、そなたの邪魔をする人間が待ち構えているだろうから気を抜くことはおすすめしない」

「ご忠告どうも」


…そんなことは、分かりきったことだ。

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