目を覚まして ページ15
漸く部屋から一歩前へと踏み出し、通路に足をつけると足の裏がひんやりとした。床は鉄で出来ていて、殺風景な道が左と右に伸びている。天井には人工的な光を放っている照明があって、床がその光を濁らせながらも反射させていた。それを踏みつけるようにして、トン、と音をたてながら後ろ手で襖を閉めた。もう、この部屋に戻ることはないだろう。戻るわけにはいかないのだ、何としてでも、この船から脱出しなければならない。そう思いつつも考える。私が居なくなった部屋で、また子は目を覚まして、それからまず何を思うのだろうか。どんな表情をするのだろうか。そんなことを、どうしようもないと分かっていても、考えてしまう。考えずにはいられないのだ。
…今は夜だから、きっと目を覚ますときには朝日が昇っていることだろう。心地よい眠りから目を覚まして、気持ちの良い朝を過ごしてほしいけれど、そうはいかないことは理解していた。だって彼女は気を失う前に、私に銃口を向けながら、その引き金を引きながら、泣いていたのだから。新しい日が昇ったくらいで、その涙が渇くとは思えない。
…彼女の切実な声を、彼女の泣き顔を思い出して、胸の辺りがツキリと痛む。その痛みを抱き締めるような心持ちで、私は歩を進めようとする。すると。
「行くでござるか」
…遠くからまた爆発音が響いて聞こえてきて、その騒音を潜り抜けるようにしてその声が耳に届いた。なんだか弱りきった風に、それでも笑って見せながらに、私は息を吸い込んだ。その声で、いや、その口調で、誰が私に語りかけたのかすぐに把握できた。私の知る限りでは、こんな口調で喋る奴は一人しかいない。吸い込んだ空気を声に変換して、私は口にする。
「…待ち伏せしてたの」
「あァ、待っていたでござるよ」
ソイツ、河上万斎は言った。すぐそこにある曲がり角からコツリと足音を立てて姿を現しながら。静かに、口角を吊り上げている。
「何しに来たの、私を止めに来た？」
「いいや、ただ、見送りに来たのでござるよ」
紅の舞姫が走り出すのを、と。淡々とした声で言う。けれど武市よりは色を持った声で。無色透明に限りなく近いけれど、何らかの色を纏った声だった。
「…いいの？晋助に怒られるよ」
「晋助に言われてここに来たわけではないので問題ないでござるよ。それに、そなたもその方が助かるのではないか？」
確かにそれはそうだけれど、私の中には疑心が募っていく。
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ちあき(プロフ) - 感動する(TT) (2018年5月11日 19時) (
レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» 返信遅れてごめんよ！！そう、なんとも複雑なトライアングルが出来上がったよ（笑）続篇も出すからそっちでもお楽しみにあれ！！ (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 零さん» 返信遅れてごめんなさい！！土方さんがやっと夢主ちゃんに会うことが出来ました！！小競り合いをする二人を書くのが久しぶりだったので楽しかったです！！続編も出ますので、そちらでもまたよろしくして頂けたら嬉しいです！！ありがとうございます！！ (2018年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - んふ、元彼と今彼のご対面ですね、、、！ いやはや、楽しみでしょうが無いです。 (2018年5月2日 22時) (レス) id: 8b211097c0 (このIDを非表示/違反報告)
零 - 土方さんキター---!!!いつもの二人が帰ってきた!!２３点って確かに容赦ない（笑）でもそれでこそこの二人だ！と思いました。更新が楽しみすぎて毎日スタンバッてます！！ (2018年5月1日 20時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年4月11日 18時
