あなたの望みは (ページ1)

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物語の始まりページ1

その少年は、なんの変哲もない小さな村に生まれた。
すらりと伸びた手足に端整な顔は村の少女たちの憧れ。だが、とある容貌によって彼は大人たちから煙たがられていた。
「ああ、見ろや。白鬼が歩いてる。」
「おっかねぇ。赤い目が気持ち悪いったらありゃしない。」
老人たちの言葉に、肩を落としながら泥道を歩く。少年には父はおれど母は既に亡く、その母はとても稀な色味を持っていたらしい。生まれつき白い髪に赤い目、蛇のように縦に裂けた瞳孔。そんな母を愛した父は、少年を大事に育ててくれた。
お前は、私の大事な人の忘れ形見なのだから。
だから守らなければならないと、そう言ってくれた父の後ろ姿は力強くて、しかしどこか寂しげだった。

「白斗！おい、今から帰りか？」
突然、背後から声がかかる。少年が振り返ると、そこには人懐こそうな笑みを浮かべた同い年の幼馴染が立っていた。
「弘久、今から家に帰るとこ。」
「じゃあ俺も。…またあの嫌味なジジイどもになんか言われたか？」
弘久が鋭い視線を向けたのは、先ほど少年へ嫌味を向けた大人たちだった。その中には弘久の大叔父もいる。だが、迷信など信じない子供たちにとって、彼らは幼馴染を傷つける敵だった。
普通ならば子供もいじめる側にまわるのだろうが、子供が少なく、少年を本当に幼い頃からよく知る子供たちにとって邪魔者なのは大人、中でも老人の方なのである。
「……いいよ、弘久。行こう。」
「ったく、お前は甘いよ。」
連れ立って、二人の幼馴染は家路につく。
その後をじっと見つめる視線には、彼らは気づく事がなかった。