報い[テレサ] ページ32
「資金を調達するいい方法がないか、こちらでも試してみます。また連絡します、失礼」
投資者と話しているペイジ博士の元へ向かう。
「準備はいい？大丈夫よ」
並んで歩く私の背中に、ペイジ博士が優しく手を置いた。
今日はWCKDに資金援助をしてくださっている方々への定期報告会議だ。
ここで足踏みすれば、資金援助されずに実験が進まなくなる。失敗は許されない。
「人々は不信感を抱き始めている。この壁を築いたとき、あなたは一時的な予防措置だと言明された。今になって何故完全封鎖を？」
男性がペイジ博士を問い詰める。
「状況が変わったのです。それも悪い方に。感染率が３倍にも増加しています。幸いなことに、研究は壁を越えようとしています」
巨大なモニターにミンホが映る。
「これは被験者Ａー７号。あの迷路による実験を３年以上受けました。その結果生み出された抗体は、かつてないほど強いものです。現在、新しい血清を採取中です。皆さんのご協力を得て、人体実験に入りたいと」
「それは楽しみだけど、前にも同じことを聞いたわ。正直言って私たちも迷い始めているの」
女性が疑問を投げかけると、男性も「健康な人間を囲い込んだ方が早いんじゃないか？」と口にした。
「あちこちにこんな街を作るの。それで大勢の人を救えるはず」
女性の考えの浅はかさに、私はついに口を出していた。
「何人ですか？１０００人？２０００人？壁さえあればウイルスを防げるという考えは幻想です。外はまるで地獄です。感染者は非感染者の３倍。破滅を先送りにしてるだけでしょう。ご家族をウイルスで失った方はいます？」
「姪を。名前はアンナ」
「ウイルスに負けずに生きられる未来を想像してください。病を治せる。もしアンナに会えたらこう言えるのです。
"普通の人に戻り、普通に生きられるのよ"
これだけ治療法に近づけたのは初めてです。ここまでくるには多くの犠牲を強いられてきました──どうか、その犠牲を無にさせないでください」
定期報告会議が終わる。景色を眺めているとペイジ博士が戻ってきた。
「よくやったわ。難しい人たちだけど、うまくあしらった。トーマスがいつも言ってた。避けられないことを先延ばしにしてる、と。彼のことを思い出す？」
「……」
「悪いことは言わない。忘れなさい。思い出しても仕方がない、目の前のことに集中して」
「……忘れられません。忘れたくないんです。治療法を見つける、それしか彼らに報いる道がない」
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灰(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。その複雑な感情、私にとっては最高の褒め言葉です。嬉しいですね、何度も読み直しています。応援してくれてありがとうございます。これからも一緒にメイズランナーを見届けてもらえたら幸せです。 (2022年8月5日 18時) (
レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - 完結まで頑張ってほしいけど終わってほしくない…！というという複雑な感情です笑頑張ってください！ (2022年8月5日 11時) (レス) @page47 id: 154610999c (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 金魚さん» 金魚さん！また読みに来てもらえて嬉しいです！そしてコメントも残してくれて、本当にありがとうございます！メイズランナーの世界を一緒に楽しみましょう！私のことまで気遣ってくれて、私は幸せ者です。ありがとうございます。 (2022年7月21日 19時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
金魚 - 更新ありがとうございます！やっぱりこの作品が好きなのでとても嬉しいです！！続きを楽しみにしておりますが、灰さんのペースで楽しんで書けることを願っています！ (2022年7月21日 12時) (レス) id: 60316f025e (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 猫魔さん» コメントありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。私には恐れ多いお褒めの言葉をありがとうございます。胸にしっかり刻んで今後の更新に繋げていけたらと思います。また遊びに来てくれたら嬉しいです。 (2022年7月13日 11時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2020年9月24日 16時
