6.眠り姫 ページ6
昼頃に任務を終え高専に戻ると、ちょうど真希とパンダも帰ってきている頃だった。
「2人も今終わったんか?」
「しゃけ」
「お疲れ」
お互いを労い合い、一緒に高専に入る。
教室に向かうつもりが、途中見えた中庭に人影があるのを発見し、そちらに向かう。
「…何してんだ、お前ら」
木陰にいたのは、悟と恵、そして眠る玉犬とA。
面倒そうな表情を浮かべる恵に話を聞くと、どうやら訓練中にAが誤って自分にも術式を掛けてしまい、玉犬と一緒にお昼寝をしてしまっているそう。
その天然ぶりに少し心配になったけれど、彼女の寝顔が相変わらず可愛らしいせいで何も考えられなくなる。
「で、起きねーの?」
「かなり時間経ってるんですけど…」
「まぁ、今までほったらかしてたからね。そろそろ起こしてみようか。ちょうど棘も来たしね」
僕?
首を傾げていると、悟も真希もパンダも、ニヤニヤと僕を見つめていた。
「眠るお姫様を起こすのは、王子様のキスでしょ」
悟の言葉に、顔が赤くなっていく感覚がした。
「…おかか!!」
「なんだよ棘、それでも彼氏か?」
「しゃけ!!!」
「うるせぇ」
僕を揶揄う3人についていけないのか、「俺は戻るんで」と恵が立ち上がり、玉犬をしまう。
寄り添っていたものがなくなったAは、少し寂しそうな寝顔になった気がする。
「…高菜ぁ…」
名前を呼びかける代わりに、しゃがみ込んで小さく呟く。
Aは変わらず寝息を立てているばかりだ。
「これだけそばで騒いでても起きねーなら、普通に起こしても無理だろうな」
「そうだねー。ま、棘に“呪言”でも使って貰えば一発だろうけど」
「王子様のキスでもいいぞー」
目覚めない彼女を心配する僕をよそに、3人が囃し立ててくる。
「ツナマヨ!!」
「ん?俺らがいたら緊張するって?」
「おかか」
「じゃ、邪魔者は退散しますか」
僕の話も聞かず、3人は去っていく。
3人のふざけ具合に呆れながらも、僕はAに向き直った。
少し体を揺らしたり、声を掛けたりするくらいでは、彼女は目覚めてくれなかった。
僕に残された選択肢は、あと2つ。
“呪言”と、キス。
…いや、後者で目覚めさせるなんて、おとぎ話の世界だけに決まっている。
“試してみてもいいかも”、なんて好奇心と邪心を捨てるため、僕は首を大きく振る。
早く、Aを起こさないと。
僕は彼女に近づき、口元のファスナーを下げた。
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saki - 棘くんの呪いが出てくるとは…!伏線回収(で合ってるかわかんないですが)素晴らしすぎます!神作品ありがとうございます! (11月4日 23時) (レス) @page31 id: 15ea9621b8 (このIDを非表示/違反報告)
白狼(プロフ) - 続きが凄い気になる。ネタを考えるのと投稿頑張ってください!応援してます! (2022年4月4日 0時) (レス) id: 62f0033d85 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - ネイジェさん» コメントありがとうございます‼︎上手くお話がまとまらず苦戦していますが、楽しんでいただければ嬉しいです*これからもよろしくお願いします* (2022年1月19日 16時) (レス) id: 55d308068d (このIDを非表示/違反報告)
ネイジェ - 続き、続きが気になる・・・!とっても私の好みな作品です!神ですか!?神なんですか!?更新頑張って下さい!応援してます!!! (2022年1月18日 14時) (レス) @page29 id: 09b28cb614 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - 姫宮 玲雅さん» コメントありがとうございます*ゆっくり頑張ります‼︎ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 55d308068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋波 | 作成日時:2022年1月4日 15時