27.縁談 ページ27
「僕と結婚していただければ、貴女には一切苦労はさせません」
そんなことを言っているのは、私の縁談相手。
貼り付けたような笑顔に虫唾が走る。
『苦労せず生きたいとは思っておりません』
「…なら何をお望みですか？」
『貴方に望むものは何も』
「A！」
祖母の怒号が響く。
着付けられた着物も結われた髪も、この部屋の重苦しい空気も、全てが億劫だった。
どうしたら目の前に座る彼は、婚約を破棄して帰ってくれるだろうか。
「落ち着いてください、A様。…Aさんも、そんなに俯かないでください」
声色だけは優しい彼。
でも、心の内の本音を聞かせてくれない彼を信用なんてできなかった。
「そんなに結婚は嫌ですか？」
『はい』
「…そこまで潔く拒絶されてしまったら、ショックで今すぐ死んで呪霊になってしまいそうですよ。或は“呪詛師”にでもなってしまおうか」
『その方が都合が良いです。貴方を消すことが許されるので』
「いい加減になさい、A」
「いいんです、A様」
怒りで顔を歪める祖母を、彼は止めた。
「少しで結構ですので、2人きりでお話させてください」
その言葉に、双方の親族も使用人も部屋を出ていく。
「…A。決して失礼のないように」
祖母はそんな言葉を言い残した。
「…Aさんは、僕の何が気に入らない？」
『貴方が気に入らないのではありません。この血筋と、結婚を強いられていることが気に入らない』
「じゃあ、こう考えれば良いじゃないか。Aさんはお祖母様に強いられて結婚するのではなく、自分の意思で結婚をする。僕とAさんは、惹かれ合って結ばれたものだと…僕は君と結ばれたい。写真よりも、何倍もお綺麗だ」
彼は私の隣に移動し、私の手を取った。
それでも私は、決して彼と目を合わせなかった。
『自分の意思で結婚できるのなら、私には結ばれたい方がいます』
「僕ではない誰か、ということかな？」
『はい』
「…困ったな。乱暴するしか、方法がなくなるじゃないか」
彼の体に、呪力が纏われていくのが分かった。
「呪いを掛けて、無理矢理僕のものにしようか」
そのとき、「失礼します」と一声掛かった後で扉が開く。
入ってきた使用人さんは、術式を使おうとしている彼を見て青褪めた。
「A様、危なっ…」
彼女の腕と彼の腕が、ほとんど同時に私に伸ばされる。
衝突するような音は、きっとこのお屋敷全体に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3547人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
saki - 棘くんの呪いが出てくるとは…！伏線回収（で合ってるかわかんないですが）素晴らしすぎます！神作品ありがとうございます！ (11月4日 23時) (
レス) @page31 id: 15ea9621b8 (このIDを非表示/違反報告)
白狼(プロフ) - 続きが凄い気になる。ネタを考えるのと投稿頑張ってください！応援してます！ (2022年4月4日 0時) (レス) id: 62f0033d85 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - ネイジェさん» コメントありがとうございます‼︎上手くお話がまとまらず苦戦していますが、楽しんでいただければ嬉しいです*これからもよろしくお願いします* (2022年1月19日 16時) (レス) id: 55d308068d (このIDを非表示/違反報告)
ネイジェ - 続き、続きが気になる・・・！とっても私の好みな作品です！神ですか！？神なんですか！？更新頑張って下さい！応援してます！！！ (2022年1月18日 14時) (レス) @page29 id: 09b28cb614 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - 姫宮 玲雅さん» コメントありがとうございます*ゆっくり頑張ります‼︎ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 55d308068d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緋波 | 作成日時：2022年1月4日 15時
