呪術廻戦*狗巻くんの心の声

37.暴露 ページ38

「…大丈夫さ。Aがそう考えるのは、不思議なことじゃない」


悟が、小さい子供をあやす様な優しい声で言う。

それと同時に、僕に顔を向け、「棘も何か言ってあげて」と目で訴えて来た。


「…しゃけ」


言葉では上手く伝えられないことは分かっていた。

だから代わりに、彼女に手を伸ばし、ゆっくり頭を撫でた。


みんなの為に戦ってくれて、ありがとう。

僕達も、Aの事が大好きだよ。


まるで手のひらから僕の思いが伝わったかの様に、Aは涙を流しながらも笑ってくれた。


『五条先生』

「ん、どしたの」

『…狗巻くんに、お話したいことがあるんです。2人にしてもらえませんか？』


Aが言うと、悟はニコリと笑って立ち上がった。


「もちろん。…棘。もう暗いから、帰るときはAのことよろしくね」

「しゃけ」


頷くと、悟は「じゃあ、ごゆっくり〜」と去って行った。


『…狗巻くん。ここ、座って？』


散々泣いたせいか、Aは鼻声で少し話しにくそうに言った。

目も鼻も赤くなっているけれど、横顔はいつも通り可愛かった。


…そんなことを考えていると、Aはまた笑いを溢した。


『…こんな顔でも可愛いって思ってくれるの、きっと狗巻くんだけだよ』


「…ツナ、マヨ」


どういうことか分からなくて、僕は意味のない言葉を溢した。


口に出して言った筈がない。

それなのに、Aは僕の考えることを分かっていた。


『ずっと黙っててごめんね、狗巻くん』


さっきの笑顔とは反対に、申し訳なさそうな顔で僕を見るA。


『…私ね、人の心の声が聞くことが出来るんだ』


「……？！」


彼女の言ったことを理解したと同時に、僕は今までで一番と言っていい程焦った。

僕の心の声が聞こえるということは、いつもAに対して抱いている“好き”や“可愛い”は、彼女にしっかりと届いているということだ。

それどころか、今こうして焦っているのもAには筒抜けで…


「…おかかぁ…！」


恥ずかしさでどうしようもなくなり、僕は顔を手で覆った。


…これ以上恥ずかしい思いをしたくない。

でも、何も考えずにいようと目を閉じれば、頭に浮かんでくるのはAの姿で。

僕は本当に彼女のことが大好きなんだな、と実感すると同時に、それすらも彼女に伝わってしまっている訳で…


隣に座るAの様子をこっそり窺うと、彼女は困った様に笑っていた。

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