28.寝顔 ページ29
「…やっと起きたのかよ」
〈人の部屋でどんだけ寝てんだ、こいつ〉
起きてすぐに聞こえて来た、真希ちゃんの声。
まだぼんやりする頭で、何故自分がここにいるのか考える。
『…そーだ、真希ちゃんとお昼寝しに来たんだっけ〜…』
「私は寝てねぇ」
〈また寝ようとしてんな。どんだけ寝たら気が済むんだよ、子供か〉
欠伸をしながら真希ちゃんの体に寄り掛からせてもらっていると、彼女の心の声が聞こえてくる。
子供だなんて失礼な、とは思うが、ここ最近私の睡眠時間は確実に増えていた。
『真希ちゃんのお隣、居心地が良いからいくらでも寝れちゃう』
〈…妹みたいだな、ホント〉
真希ちゃんは、声には出さずにそんな事を言って、私の頭を少し撫でてくれた。
彼女に双子の妹さんがいることは知っている。
こんな風に2人で時間を過ごすことのない関係であることも。
そんな妹さんの代わりなんて大層な存在になれないことは分かっているから、私は私なりに、真希ちゃんに甘えたい。
『真希ちゃん、毎日一緒にお昼寝しよう』
「昼寝はしないタイプだから。Aの間抜け面撮るのは楽しいけどな」
『…ん?』
ニヤニヤしている真希ちゃんが見せてきた携帯の画面には、本当に間抜けな顔をして眠っている私の顔。
『…なんで?!』
「幸せそうに寝てんな〜と思って」
〈初めの頃より、表情豊かになったよなぁ…雰囲気も柔らかくなったし。…この寝顔、棘に見せたらどんな反応すっかな〉
表情が豊かになったのも、柔らかい雰囲気になったのも、全部高専のみんなのお陰だ。
…そんなことより、その写真を狗巻くんに見せるのだけはやめてほしい。
こんな間抜けな顔、彼に見られたら…
…あれ、でも私、狗巻くんの腕の中で眠っていたことがあるんだった。
もしかして、こんな寝顔を晒して…
「…そういえば、さっき棘から連絡来てたぞ」
『ひゃぇっ』
「何だよ、その声」
〈棘に反応したんか?〉
真希ちゃんのニヤニヤ顔に、恥ずかしさが増す。
狗巻くんの事を考えているときに彼の名前が出てきたから、思わず変に反応してしまった。
「“悟がたこ焼き器買って来たから、みんなでたこ焼きパーティーしよう”…だって」
『…!する〜!』
「はしゃぎ過ぎ」
目は完全に覚めて、私は立ち上がった。
『着替えてくる〜』
「おー」
真希ちゃんが私の間抜け面を待ち受け画面に設定していたことなんて知らずに、私はわくわくしながら彼女の部屋を出た。
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saki - 告白の仕方がこう…どっちも呪いって言うのが良すぎる!硝子さん出てくるのも好き… (11月4日 0時) (レス) @page43 id: 15ea9621b8 (このIDを非表示/違反報告)
佳日 - 初めまして!緋波さんの描く狗巻先輩とヒロインがすごく可愛らしくて一気に最新話まで読んでしまいました!ずっときゅんきゅんしています!素敵な作品をありがとうございます! (2021年4月11日 12時) (レス) id: d082233f53 (このIDを非表示/違反報告)
ねね - 狗巻先輩かっこいい〜〜〜!あの整った顔立ち、さらっさらの髪の毛!素敵な声〜〜〜!!凄く好きです!好きすぎて丸一日狗巻先輩のことを考えています!!大大大大ファンです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月19日 21時) (レス) id: 1efb73ea53 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - #すずめさん» ありがとうございます~!*これからも頑張ります* (2021年3月6日 19時) (レス) id: c96b915781 (このIDを非表示/違反報告)
#すずめ(プロフ) - 狗巻先輩可愛い!これからも更新頑張って下さい!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: d788bf59a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋波 | 作成日時:2021年2月21日 0時