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18.お見舞い ページ19

Aの部屋を訪ねに来たが、日中に熱が上がってしまったらしく、彼女は思っていたよりも辛そうだった。


『いぬまきくー…ごめんぇ、せっかくきてくれたのに…』

「おかか、ツナマヨ!」


気にしないでいいから寝てて、とAをベッドまで連れていく。


「…すじこ、明太子?」


何かいるものはないか、聞こうと思った。

伝わるか不安だったので、携帯に文字を打ち込もうとしていると。


『んん〜…お水、のみたいなぁ…』


Aが唸るように言ったので、僕は水を持ってきた。

熱でボーッとしているのか、豪快に溢しながら水を口に運んでいるA。

そんな姿でさえ可愛いと思えたけれど、今はAの看病に集中しなければ。

邪念を振り払おうと頭を振っていると、Aが『んふふ』と嬉しそうに笑った。


『いぬまきくんのほうが、かわいいよ』


突然のAの言葉に、僕は意味が理解出来なかった。

別に何か口に出して言った訳ではないのに、Aはまるで僕と会話をしているようだ。


『んん〜…頭いたいから、ふわふわしてるのかなぁ…いぬまきくんが、ぼやぼやしてみえてきたよ』

「ツナマヨ、昆布!」


まるで酔っ払っているようなAに、僕は今すぐ横になるように言う。

Aは『まだこどもだから、お酒はのめないよ〜』と、また意味の分からないことを言っている。


『…このしんどいの、全部どっかに飛んでいっちゃえばいいのになぁ…』


今日のAはよく喋る。

どこか楽しげな表情で、彼女はそう呟いている。


僕なら、Aの辛さなんて喜んで請け負うのに。


『…いぬまきくんに、うつしてもいーの?』

「高菜?」


突然の問い掛けに、僕は首を傾げる。

さっきから、1人で会話を進める彼女。

でも彼女の発言は、まるで僕の心を読んでいるように、僕の思いに応えてくる。


「…しゃけ。明太子」


“Aが辛いなら、僕は助けたいよ”


『…じゃあ、わたしの風邪、いぬまきくんにうつすね…』


Aはフラフラと起き上がり、倒れ込むように僕の体に抱き付いてきた。

咄嗟に支えた彼女の体は、昨日抱き締めたときよりも遥かに熱い。


『いぬまきくん』


「…しゃけ?」


『…いつも、ありがとう』


僕よりもずっと弱い力で抱き締めて言い、Aは眠りに落ちた。

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saki - 告白の仕方がこう…どっちも呪いって言うのが良すぎる!硝子さん出てくるのも好き… (11月4日 0時) (レス) @page43 id: 15ea9621b8 (このIDを非表示/違反報告)
佳日 - 初めまして!緋波さんの描く狗巻先輩とヒロインがすごく可愛らしくて一気に最新話まで読んでしまいました!ずっときゅんきゅんしています!素敵な作品をありがとうございます! (2021年4月11日 12時) (レス) id: d082233f53 (このIDを非表示/違反報告)
ねね - 狗巻先輩かっこいい〜〜〜!あの整った顔立ち、さらっさらの髪の毛!素敵な声〜〜〜!!凄く好きです!好きすぎて丸一日狗巻先輩のことを考えています!!大大大大ファンです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月19日 21時) (レス) id: 1efb73ea53 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - #すずめさん» ありがとうございます~!*これからも頑張ります* (2021年3月6日 19時) (レス) id: c96b915781 (このIDを非表示/違反報告)
#すずめ(プロフ) - 狗巻先輩可愛い!これからも更新頑張って下さい!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: d788bf59a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:緋波 | 作成日時:2021年2月21日 0時

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