呪術廻戦*狗巻くんの心の声

9.お疲れ様 ページ10

その後、ランニングは私が20周するまで続いた。


『つかれた…』


そう呟くのが精一杯で、私はだらしなく木陰に横になって息を整えていた。


みんなの声や思念が聞こえてきているけれど、その言葉の意味も頭に入って来ない程疲れていた。


「…高菜、ツナマヨ」


倒れている私の顔を覗き込んでくる狗巻くん。

私は慌てて起き上がった。


『ごめん、だらしなくて…』

「しゃけ」
〈可愛いから何でもいい〉


狗巻くんが親指を立てている。

そんな狗巻くんが、タオルとスポーツドリンクを差し出してくれた。


『…もらっていいの？』

「しゃけ」

『ありがとう』


〈…笑ってる顔、やっぱり好きだな…〉


お礼を言って受け取った私を見つめて、狗巻くんはそんなことを考えている。

聞こえていないフリをして、私が貰ったスポーツドリンクを飲んでいると。


狗巻くんの手が伸びて来て、私の頭に触れた。


〈…お疲れ様〉


狗巻くんは何も言わなかったが、優しい声は私の心に届いている。


嬉しくて、でもどうしようも出来なくて、呆然としていると。

狗巻くんが立ち上がり、どこかへ行ってしまう。

頭から手が離れていき、少し寂しくなる。


何で何も言わないんだろう。

走った後だし、もしかしたら汗臭かったかも…


いきなり不安になり、狗巻くんの後ろ姿を目で追うと。


〈…どうしよう、触っちゃった…可愛い…ぎゅってしたい…〉


彼は両手で頬を押さえている。

狗巻くんも恥ずかしかったんだ。


狗巻くんの心の声が嬉しくて彼と同じように手を頬に当てる私を、真希ちゃんとパンダくんはニヤニヤして見ている。


〈分かりすいな、棘も〉

〈2人共、青春してんな〜〉

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