〃 ページ10
.
あったあった、と焉さんが見上げる先には和式しかない女子トイレがあった。
4つの扉があり、そのどれもが閉まっている。
扉だけで妙に威圧感があり、僕は焉さんに手を引かれるようにして女子トイレに入った。
･･････なんだか1人で外に居ちゃ、いけないようなきがしたので。
不可抗力で女子トイレに入り、手前から3番目のトイレをノックする焉さんを見つめる。
「はーなーこーさーん」
コン、という扉の音が狭いここに反響して、反響して――――。
そして、また不気味な静寂に包まれた。
焉さんはただじっと扉を見つめている。僕もじっと扉を見つめた。
･･････すると、
「――――は、ぁ、い･･････」
ギイ、と3番目の扉がゆっくり開き中からか細い子供の声がした。
ひ、と息を呑むがどうやらこれは現実のようだ。
とりあえず運痴の焉さんを引き寄せて、せめてもの抵抗に電撃を天井の電球にお見舞いする。
一瞬だけ眩しい光がそこを照らし、僕と焉さんは目を覆った。
「きゃあ！？ちょ、っと、なに！？」
すると同時、トイレの中から子供の悲鳴が聞こえてきた。
だがそれは先程のか細い返事と同じ声で。
焉さんはけらけら笑いながら、トイレの扉を遠慮なく開いた。
「やぁ、花子」
「･･･やだ。なんの冗談？なんでアンタがここに居んのよ」
そこには、赤い吊りスカートを着た、おかっぱ頭の小学校中学年くらいの少女･･･
『花子さん』と聞いて1番に連想するであろうそれが、眉間に皺を寄せて立っていたのである。
僕よりも、いや焉さんよりも小さなその顔はキッとこちらを睨め上げており。
焉さんはそれをさも面白そうに見つめたあと、にっこり笑った。
花子と呼ばれた少女は冷や汗をかいて後ずさる。
「な、なによ･･･。笑ってないでよ、アンタのその顔、大嫌いなんだから」
「んん、失敬だな。僕はただ、君が"護っている"彼を引き取りに来たのだけれど？」
花子さん(？？？)はまた顔を歪めて後ずさる。
だが足元が和式便所なのに気付いて慌てて足を止め、キッと焉さんを睨んだ。
･･･うん、いくら住み処がトイレでも足をトイレに突っ込むのは嫌なんだな。
無駄なところに感心しながら、目の前の少女の存在について何も聞かされていないことに気づく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
総悟13(低浮上)(プロフ) - コメントありがとう！なぜシャレオツに言い換えた(笑)ありがとう！じゃあもっとずっと読んでもらえるよう頑張らなきゃね(笑) (2017年11月5日 18時) (
レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - 真剣に読もうとやって来たらCSSが何かめちゃくちゃオシャレな……じゃなくてシャレオツな事になってて思わずコメントをしてしまいました。魅力的で素晴らしいの一言に尽きる！！ (2017年11月5日 18時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：総悟13 x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年11月4日 2時
