虎鶴の地 (ページ6)

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四の貢ページ6

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黄金の毛並み、鐡色の模様。大地を穿つような咆哮と雲間の月光。そして凍える大地に横たわる私と何か。
夢のようで現実味のある情景が徐々に溶かされていくような感覚。

あともう少しで……目を開ければきっとその存在がわかる筈なのに……。

「……気がつきましたか？」

最後に見た頂きに沈む茜色の日……ではなく覗くのは早朝のような白い陽光。部屋のすっかり火が消えてしまった火鉢と煎餅布団は眼前にある。

……次に目を開けた時、私の右横には見知らぬ男が革張りの椅子に腰掛けていた。若く、そして貧弱そうな面をした人が。

「……その声は……しかも朱の……」

白地に朱、そして絹。目の前の男は見かけぬ色彩をした高価であろう衣を纏っていた。一般的には麻や綿しか国民は着ないというのにだ。

こんな物が身に纏えるのは高官か崑の豪商くらいだろう。

「……あぁ、まだ動かぬ方がいいですよ。勿論応急処置はしましたけどね。崖から落ちてきたんですから安静になさい」

そう言われてみると痺れるような痛みが全身を襲った。特に足は動かすこともできそうにないほどに。

首を少し動かせば薬草の香りと消毒に使ったであろう布切れと桶が枕元にあり、足は吊ってあった。

「……三日ほど眠っていらしたんですよ。かく言う僕も崖から落ちてきた貴女を運んでいたら空腹で行き倒れましてね。宋至様が発見していらっしゃらなかったら、二人とも凍ってましたよ」

袖口で口元を隠しながら男は微笑んだ。それから目覚めて良かったとも言った。

「……おぉ、梨鶴目が覚めたか」

戸を開け、爺さんが湯気が立つ器を持って私の枕元に寄る。見知らぬ男は席を立ち、椅子を引いて足の悪い爺さんを座らせた。

「心配かけたね……爺さん。どうやらこの人が私を助けてくれたんだって？」

それから爺さんは私の身にあったことを一つ一つ教えてくれた。学のない私に理解できるよう丁寧に。

聞いた後、理解するのに時間を有するほどの話であった。