虎鶴の地 (ページ1)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:2,441 hit

伝承ページ1

．

こんな言い伝えがある。

この世は仏耀(ふつよう)と呼ばれる神がお創りになられた。仏耀はこの世を八つに分け、東西南北八方の小高い丘にそれぞれ都を置き、国境を定め王を据えた。八人の王それぞれには奇跡を授け、やがて空へと消えた。

そして仏滅971年。

仏耀はとうの昔に地上から消え、最南端の国、璃国(りこく)が他の七つの国を支配下に収めた。
地上にあるは璃、ただ一国。

全統一から五年、思想も習慣も統一されていく世の
中で人々は何に苦しみ、生きる糧を見出すのか。

たった五年で世は荒れた。全て一律な世界になり、戦禍に巻き込まれることはなくなったのにである。

ある時は日照りが続き、田畑の作物のほとんどが枯れた。またある時は疫病が流行り、村々が潰えた。

古くから璃に住む人々は恐れ慄く。南に住む我々が北方への領土を望み、侵略行為を行ったこと。
きっと仏耀様はお怒りなのだ。浅はかな人間の蛮族的な行いに。

そこから災いを収める為に仏耀へ祈りを捧げる人々が信仰心を持つ。はたまたそんな璃への抵抗を始めるものがでる。各地で七つの国の王と偽る者が兵を挙げる。

理想郷とは程遠い、安定せぬ日々。貧困、天災、疫病、様々な厄災渦巻く地。

これから語る事の発端は最北端の旧寛(かん)国から始まったものである。