３１５：ショコラティエからの 〜J〜 ページ35
ドラマ撮影が続く俺は日付越えの帰宅の日々で。
「おかえり。」
でも、仕事を辞めたAがこうやって起きて待っててくれる。
「ただいま。」
腰に回した腕で軽く抱き寄せただいまのキス。
どんなに疲れてても、俺の癒しで精神安定剤のAに出迎えられると疲れは吹っ飛んで…
こうやって…この時間からでも…
「んもぉ！明日も早いんでしょ？」
「それとコレとは別モノ。男は疲れた時のがシタくなんの。聞いた事ない？」
頑張れる俺がいて。
Aに仕事を辞めてもらうのは、最初は俺のエゴってか我儘だって思って、後ろめたい気持ちもあったけど…。
今ではすっかり…そんな気持ちはどっか行って、この生活を楽しんでる。
「あ！そうだ！ちょっと待っとけ。」
俺に引っ付くAの背中をポンポンって叩いて離れる。
さすがにこの時期素っ裸で夜中うろつくのは寒い。
足早にリビングに向かいバックの中から箱を取り出した。
「さみぃ〜。」
急いで布団に入ってAを湯たんぽ代わりに抱きしめた。
「潤くん、冷たい！」
「お前、あったけぇな。」
ぬくぬく温まってきた所でベットヘッドに置いた箱を手だけで取った。
「はい。ショコラティエからのバレンタイン兼お誕生日。」
「え？！潤くんの手作り？」
「ん〜…って事にしといて？」
全部が全部じゃないし。
うつ伏せになったAの隣に俺もうつ伏せになって寄り添う。
「開けてい？」
「もちろん。」
丁寧に金色のリボンを解いて箱を開けた。
「美味し…そ…？」
あ、箱の位置的に見つけ易かったか？
失敗したな…もっとわかりずらいトコに隠せばよかった。
「…さっき…帰りの車で報告受けた。」
本当は二人で出したかったけど、入籍日を発表してあったから、区役所に記者が張るのはわかってて。
マネージャーに一任した。
「もう既にAは俺の嫁さん。」
箱の中からチョコに埋れている指輪を取り出し、既に嵌めてある指輪に重ねてつけた。
「…A？俺にも。」
「…ん。」
お揃いのデザインの指輪を、俺が差し出した薬指に嵌めてくれて。
「誕生日おめでとう。松本Aさん？」
「…っ…ずるぃ〜…。」
「…おいで？」
身体を横向きにして腕を広げると、すっぽり俺の腕の中。
「やっと…これでやっと俺のA。俺だけのA。」
「…ぅっ…。」
「これからずっとよろしくね？奥さん？」
目の前のAの額にキスをして、結婚して初めての幸せな夜を迎えた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年12月21日 16時
