２０４：返品不可で… ページ4
「二宮さん？今日は潤くんとは別なんですか？」
「えぇ。俺は今そんなに忙しくないしね？Jは今日、何やってんだっけ？」
考える仕草をする二宮さんに、
「今日は…雑誌と…何だっけ？」
って言う。
あんまり覚えてはないけど…。
「JってAさんにスケジュール言うの？」
「はい。一日の大体の流れを前の日の夜のうちに話してくれますね。」
それが一昨日からは、更に事細かく伝えてくれる様になって。
「場所を移動する時には次はどこってメールしてくれて…余裕がある時には何をするかまで…。」
「ニノちゃん…びっくり…。」
本当にびっくりしてるのか、ジョッキを持ったまま目を見開き固まってて。
それは明日美も一緒で…。
「…A…あんたホントに溺愛されてんだね…。」
「私をね…もう二度と不安にさせたくないんだって。色々頑張ってくれてる。」
「不安させた結果逃げられたからね…Jは。二度とあんな思いしたくないんでしょ？」
そう言うと豪快にビールを呑む。
「…本当にその節はご迷惑をおかけして…。」
「ホントに！」
二宮さんに言ったのに、なぜか明日美がそう言って。
「まぁ…。」
それだけ言うとジョッキをテーブルにコトンと置いて、俯きがちだった視線を私に向ける。
「俺らさ…こんな仕事だし、我慢するのは女の子ばっかで…。」
「…はい。」
「だからね？色々な現実から逃げたくなる気持ちもわからなくもないんだ。実際、当事者の俺らですら逃げたくなる時もあるし。」
『ククク』って自嘲気味に笑う。
それは常々、潤くんも言ってた事で…。
多分ね？潤くんも二宮さんも…嵐さん全員が、その事に後ろめたさが少なからずあって。
「仕事は特殊かもしれないけど…俺らも普通の男で…特にJは真っ直ぐで純真だから…。」
「はい…。」
「Aさんを思う気持ちに、幸せにしてやりたいと思う気持ちに…嘘なんてどこにもない
んだ。」
「…はい。」
「それをこの一ヶ月…目の当たりにして…。だからさ？この先…ずっと…Jの事よろしく頼むよ。Aさん以外無理なんだと。」
今度は、嘘じゃない…作った笑顔じゃない…
ふんわりとした微笑みを私に向けて。
「うちの末っ子さ、手がかかると思うけど…よろしくね？もう絶対に返品しないで？返品されても引き取り手がいないんだよ。俺らじゃ手に負えないし。」
涙を堪えながら頷く私に、やっぱり優しく微笑んでいた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年11月7日 8時
