今日…僕は恋をした Part.５ (ページ13)

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１７３：自覚ページ13

ドアを開けた先にいたまどかは、私の顔を見るなりため息をついた。

無言で招き入れてくれると、ソファを指差した。

荷物をソファの横に置いて座る私を見届けると、キッチンに向かった。

「何にも聞かないの？」

まどかの背中に問いかける。

「聞かなくても…あんたの顔を見りゃわかる。それにあのメール…。」

「…そっか…ねぇ、私ホテル嫌だからここにいてもいい？」

「ご飯作ってくれるならね。」

「お安い御用よ。」

無理矢理に笑顔を作る私にため息をついて、コーヒーを出してくれた。

「…あんたの顔には、まだあのスーパーアイドルが大好きって書いてある様にしか見えないんだけど…私の目の錯覚かしら？」

「さぁ？どうでしょ？」

「それで上手くはぐらかしたつもり？顔に出てんのよ。」

「…きっと辛いのは今だけよ？帰る頃にはきっと大丈夫だから。」

そう言うとやっぱりため息のまどか。

「…まぁね？あんたの彼氏だし？あんたの恋愛だし？あんたが決める事であってさ…。」

そこまで言って視線をずらしコーヒーを飲んだまどかが、私を見る。

「けどね？あっちはそう簡単に諦めるとは到底思えない。」

「どうだろ？一ヶ月も会わなくて、連絡もしなきゃ諦めるでしょ？ましてや…スーパーアイドル。相手はいくらでもいるわよ…。」

「…あんた、本当にそう思ってんの？」

いつもキツイけど、更にキツイまどかの口調。

「あんた自分の惚れた男が、そんな男だって本気で思ってるの？」

…思ってる…

…わけないじゃない。

潤くんはいつだって真っ直ぐで…

真っ白で綺麗な…
純真な愛情を私に注いでくれた。

「…だからこそ…私は彼にはふさわしくないのよ。」

過去に…失う怖さに雁字搦めになってる私には、潤くんの純真さは…ふさわしくない。

「あんたバカね…。」

呆れた様に言ったまどかがタバコを咥えた。

「自覚してるわよ…。」

「…それは何の自覚？」

「何のって…。」

「あんたより、あっちの方が何倍も傷ついてるって自覚？」

…。

「どうせあんたの事だから、理由なんてろくに告げずにこっち来たんでしょ？」

何も言えない私に『あ、やっぱ図星？』って。

「逃げるのはいいけど…、中途半端はやめなさい。相手の為にも自分の為にも。」

かろうじて頷いたけど…

連絡を絶って、こっちに来てる以上もう無理で。

左手首を握り締め、潤くんが幸せになれる様にと…祈るしかなかった。