９：言えない 〜ニノ〜 ページ10
Jの綺麗な背中が見えなくなると同時にドアがパタンと閉まった。
雅「ねぇ？！俺、何かした？」
焦る相葉さん。
雅「ねぇ？ニノ？どうしよう。」
そんな縋る様な目で俺を見られても…。
「『どうしよう』って言われても…。」
ここにいる俺らじゃ、無理。
…Aさんでも無理か。
智「…何かあったん？」
翔「うん。雰囲気異常だよ？松潤。」
やっぱ気付いてるよなぁ。
でも、俺からは言えない。
あの人にとって色恋沙汰はデリケート過ぎる。
ましてや、好きになってはいけない人に一目惚れしたなんて…。
それに本人は恋心を自覚してんのかさえ、俺にはわからない。
「…いや、俺にもわかりません。」
結局、そう言うしかない。
智「…ニノ？」
そんな俺にも気付いている２人。
「すみません。」
それしか言えねぇ〜んだって。
お願い…察して？
翔「…待つ…か？」
待った所でどうしょもない。
でも…潤くんが、どんなに荊な道でも進むって決めたんだったら、俺に言ってくるはず。
Aさんに繋がる道は、俺…明日美しかないんだから。
「そうっすね。」
雅「ねぇ？俺を怒ってんの？どうしよう？」
「違いますって。そのうち戻って来ますよ。」
そう言ってゲーム機に視線も意識も戻した…フリをした。
俯き加減で、目だけで周りを見ると明らかに俺を見てる３人の目。
翔「ねぇ…ニノ？何か知ってんでしょ？」
「…いえ。」
お願い…それ以上は…。
智「…ニノが言いづらいんだったら松潤が自分から言うまで…ね？」
翔「…うん。」
渋々頷く翔さん。
ダメだ…こんなのはダメだ。
ゲームの電源を切って、しょげてる相葉さんに手渡す。
雅「…ニノ？」
「…トイレ。」
それだけ言って楽屋を出る。
背中に３人の視線を感じながら…。
タバコを吸わない潤くんが行きそうな所は、あそこくらいしかなくて。
薄暗い人気のない階段をゆっくり上がってくと、バタバタとするスタッフもいないせいか、俺の足音だけが異常に響いて。
少し重たいドアを押すとキィっと鳴る。
２、３歩進んで視線を巡らすと、柵に寄り掛かり景色を見つめてるであろう潤くんの背中。
ゆっくり近づくと、
「なぁ…『幸せ』って何だ？」
ってあの日タクシーで俺に聞いた事を、俺に背を向けたままもう一度聞いてきた。
俺だと確認してないのに…。
「潤くんが『幸せ』だと感じた事が『幸せ』なんじゃないっすか？」
「…そっか。」
ねぇ潤くん？
それが答えなんじゃないの？
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
