１８：迷惑 〜J〜 ページ19
会いたいって毎日毎日思って…
今日こそは会えますようにって…子供の様に祈ってあの店に行く。
でも、そう簡単に奇跡なんて起きなくて。
３度目の正直の前回も空振りで、半ば諦めモードな俺。
やっぱり…ニノに頼むしかないか。
今日、ダメならニノに頼もう。
そう思ってドアを開ける。
俺が通っている意味を知ってる…気付いているマスターが俺に目配せをする。
マスターの視線の先には…
「Aさん！」
会いたくて…会いたくて…会いたかったAさんの姿。
俺に気付いて微笑んでくれるAさん。
ゆっくり足を進めて隣に座る。
「潤？いつものな？」
頷く俺にマスターの目は応援してくれてる様で。
手早くカクテルを作ると、カウンター裏に入って行った。
「久しぶりね？」
「あ…あぁ。１ヶ月半経って…る？」
あれからコンサートを終え、季節はすっかり晩秋で次のコンサートの準備の真っ最中。
「かな？」
やっぱりマリンブルーのカクテルを呑むAさん。
「それ…好きなの？」
「うん？」
「前もそれだった…。」
「ふふ。そうね…。」
好きな割にはそのカクテルを見つめるAさんの目は切なく、寂しそうで。
「この色のね…海が好きなの。」
「ふ〜ん…。どこ？日本じゃないよね？」
「モルディブ。」
「あぁ…そっちの方のか。」
頷くAさんの横顔をジッと見つめる。
会えるチャンスなんて本当に奇跡に近い。
だから、次に会ったら絶対聞こうと思ってた。
「ねぇ？俺、聞きたい事があるんだ。」
「ふふ。なぁに？」
「…Aさんの旦那さんの事。」
正面を向いてたAさんは、そう言った俺の方をゆっくり向く。
「…そんな事聞いてどうするの？」
「…どうって…。」
「アイドルが不倫なんてマズイんじゃない？しかも松本くんは日本のトップアイドルでしょ？」
『不倫』…その言葉が重く俺にのし掛かる。
それなのに、やっぱりAさんは俺をバカにした様に話し出す。
「松本くんってわかり易いから。」
「どういう意味？」
「そのままよ？トップアイドルに好かれるなんて私も捨てたもんじゃないわね。」
「…。」
鼻で笑うAさんに何も言い返せなくて。
気持ちがバレてて恥ずかしいってよりも、俺の気持ちをバカにされたのが悔しくて…。
「あのさ？」
「なぁに？」
「俺の気持ちバカにされる覚えなんだけど。」
「バカにして…ないとは言い切れないわね。でもこれだけはハッキリ言えるわ。
…迷惑よ。」
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
