11 ページ37
.
「マネのポジが空いてるのは事実だったけど、それはちょうどいい口実っていうか…俺も近くにいられるし、一回、頑張ってみてくれないかなー、って。
まあ…そういうことだから。」
淡白な口調で紡いた言葉は、キーッというブレーキの音と共にそよ風のなかへ溶け去った。
“着いたぞー“って、動こうともしない俺に薮が声をかけたけど、自転車を降りるのも、薮のシャツの裾を掴んだ手を離すのもできない。
どうしよう、俺は今1ミリでも動いたら、きっと涙がこぼれてしまう…
それぐらい目元が熱くて、じんじんする。
痛いところが突かれた悔しさもあり、不意打ちの熱い言葉に感動したのもあって。
でもそれ以上に嬉しくて、そして嬉しいのと同じぐらい申し訳なくて…
ずっとずっと、俺が一方的に見つめてたと思ったけど、実は薮、俺のことすごく大事にしてるんだなと肌で感じるから…
「おーい、寝てたのか？…って、なんで泣いてんの？！どっか痛い？！」
ほら、すぐこうやって気遣ってくれる。
やめてよ、思わせぶりなことを。
絶対、その気ないくせに…そんな事さらっとするから…
ますます不純な思いを抱いてる後ろめたさがずんと重くなってしまうじゃん。
「やぶが…変なこと言うから……この！っ青春野郎め…！」
「ぷは、なんでだよ〜」
薮はしゃくりあげながら悪態をつく俺の髪をわしゃわしゃして、目を細めた。
薮が言ってることは全部俺のためだって分かってる。
彼は高校に入って一学期も経ったのにいまだに周りに馴染んでない俺のことを、自分のことかのように、真剣に向き合ってくれて、そして助けようとしてくれてる。
なのに、俺はどうなの？
ずっと、薮に甘えてばかりで…
情けない、情けなすぎるよ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yoku | 作成日時：2019年9月16日 0時
