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昼休み。
いつもの社食に行く気になれなくて、お昼パスするね、とグループラインに送って屋上に来た。
はあってため息をつく。
「北山部長にさくらシフォン見てもらいたかったな……」
「あ、いた」
背後から声がして振り返ると、目黒くんが屋上のドアからこっちに向かって歩いてきた。
「…聞いたよ。プレゼン間に合わなかったって」
「あー、はは。そうなんだ。
目黒くんせっかく一緒に考えてくれたのに。ごめんね」
「そんなのはいいけど。病人ほっとけないとか横尾らしいよな」
「でもね。病院にいてもできることなんて何もなかったんだから。会社に来るべきだったんだよ。
…そういう判断もちゃんとしないと」
言っていてちょっと情けなくなって、泣きそうになるのを堪えて無理矢理笑った。
「……横尾、あのさ」
「ちょっと仕事たまってて。朝遅れた分、昼休み削ってしないと。ごめん、もう行くね」
頭の中では、さくらシフォンのプレゼンが今でもぐるぐる回っていたけど、振り切るように午後の仕事は頑張った。
グループラインで、ゆりちゃんが『今日飲みに行く?』って聞いてくれたけど、『明日早いし今日は帰るね、ありがとう』って断って、社を出てそのままぼんやり歩いていたら。
ふと、玉森さんに会いたいな、って思った。
なんでそう思ったのか自分でもよくわからないけど。
足が『SEVEN WISHES』に向かっていた。
・
ガラス張りの窓から、玉森さんが見えた。
何かお客さんと談笑しながら鋏を動かしている。
そうだよね、仕事中だよね。
予約もしてないのにただ顔が見たかったなんて、ストーカーみたいじゃない?
やっぱり帰ろう、そう思った時。
鏡越しに目が合った気がした。
小走りに走り出したけど遅かった。
「Aちゃん!」
ドアが開いて、玉森さんに呼ばれた。
「あ…えと。こんばんは」
「何で帰るの?来てくれたんじゃなかったの?」
「いえ、は、はい」
どっちだよ、って、ふわって笑ってる玉森さんを見たら、なんだかいろんなものが緩んで、鼻の奥がツンてした。
「今日の、プレゼン、」
そこまでしか言えなくて、涙がぼろぼろってこぼれる。
玉森さんが手をぎゅって握って、そのままお店に行くといつかのあの日みたいにタオルを頭にかぶせてくれた。
「店長、お客様ですか?」
「うん。俺の」
タオルの中で聞いたその声は、甘く響いた。
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ニイナ(プロフ) - 桃マスカットさん» 桃マスカットさーん、読んでくださってコメントもありがとうです💓2章も楽しんでもらえたらいいなあ、お時間ある時お待ちしてます☺️目黒くん、書いてて楽しいです😂(私得) (2022年6月17日 23時) (レス) id: 9453ebaee9 (このIDを非表示/違反報告)
桃マスカット(プロフ) - この先の展開もめっちゃ楽しみですー!!目黒くん、いい役ですねぇ😏🖤 (2022年6月11日 23時) (レス) @page41 id: 21ddaf22cf (このIDを非表示/違反報告)
ニイナ(プロフ) - なっちゃんさん» なっちゃんさーん💓お久しぶりです🥰恋愛とか結婚てほんとタイミング大事ですよね✨登場人物に共感してもらえるのめちゃくちゃ嬉しいです、そのお言葉に私がほっこり🥺玉森さんに戻ってきてもらえてよかった!読んでくれてありがとです💓 (2022年6月10日 21時) (レス) id: 9453ebaee9 (このIDを非表示/違反報告)
ニイナ(プロフ) - モナさん» モナさん、玉森さん帰っちゃったわ😂ねー、目黒くんもかっこいいのよ🥺困るわあ(誰が書いてるねん)北山部長素敵よね、こんな上司の下で働きたいー!モナさんまたまた久しぶりだったのにコメントくれてありがとうです✨私もモナさん大好き💓 (2022年6月10日 21時) (レス) id: 9453ebaee9 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - つくづくタイミングってあるよなぁと目黒くんの告白見て思いました!ニイナさんの登場人物には共感できる人が多くて、心が温かくなります☆目黒くんの応援したくなりかけたけど、玉ちゃんの「会いたいって言っていいんだよ」で玉ちゃんに戻ってきました☆ (2022年6月8日 21時) (レス) id: 14913c4d63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニイナ | 作成日時:2022年2月27日 11時