Sweets Holic

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「あれ？帰ったんじゃなかったんですか？」

「もう遅いから送って行くよ。俺バイクなの」

そう言って、指でくるん、ってキーを回す。

「でも遠回りになるんじゃ……」

「家どの辺？」

「星ヶ丘駅の近くです」

「え？俺んちも星ヶ丘だよ。ご近所さんじゃん」

聞いてみると、駅の北側と南側だったけど、実は家が近かった。


「じゃあしっかり捕まっててよ」

恐る恐るバイクの後ろにまたがって、玉森さんの腰に手を伸ばしたら、その手をぎゅうって引っ張られる。

「そんなんじゃ落ちるよ。もっと力いれて」

だって。

バイクの二人乗りってこんな密着するなんて知らない！

玉森さん細身に見えるけど意外と背中広くてがっしりしてるし！

そんな私の動揺も知らずに、玉森さんは、しゅっぱーつ、って楽しそうにバイクを走らせた。

風は冷たいけど、気持ちいい。






「ありがとうございました」

結局マンションの前まで送ってもらって、かぶっていたメットをはずす。

「いーえ。どういたしまして」

「バイクって気持ちいいんですね」

「いつでも乗せてあげるよ」

「そんなこと言ったら5人の彼女に怒られますよ…」


「そういえば。遊園地は大丈夫だった？」

目黒くんの真剣な顔が頭をかすめて、思わずどきっとする。

「…はい。あの、でも実は」

玉森さんには失恋したって言ってタダで髪まで切ってもらったから話しておこうかな、と思って、遊園地で目黒くんに言われたことを話してみた。

バイクにまたがったまま話を聞き終わった玉森さんが、ぽつり、と言う。


「…なんかそれ、ずるくない？」


「え？ずるい？」

「時間がほしいっていつまで？そんなこと言われたらAちゃんは好きだから待っちゃうよね？」

「待っちゃう…ですね」

「でも結果やっぱり好きじゃない、って言われる可能性もあるわけじゃん」

ぐ。

確かに。


「いやでも彼女5人いる玉森さんにずるいって言われるのはなんか変」

「そっか…」

「……また玉森さんに髪切ってもらいます」

「え？」

「振られても。また玉森さんに切ってもらったら、大丈夫な気がする」


ふふ、って目を細めて笑った玉森さんの口が。

かわい、って小さく動いたあと。


スローモーションみたいに、ゆっくり近づいてきて。


私の唇に静かに重なった。




そのキスは。



私の試作をたくさん食べたからなのか。




どこか甘い、気がした。

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