Sweets Holic

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鯖味噌を食べてから、最後に唐揚げを食べようと思って大事に残してたら、目黒くんに聞かれた。

「食わねえの？」

「最後に味わって食べようと思って」

どんだけ好きなんだよ、って笑ってる。

違うし。

唐揚げは好きだよ、好きだけど。

目黒くんがくれたから、っていうのもあるんだよ。

「ねえ、今日金曜日だし飲みに行かない？」

ゆりちゃんが伸びをしながら言う。

「いいねー、行こ行こ」

私が賛成すると、向井くんがにやって笑った。

「ほなあそこ行こーや、Aの兄ちゃんとこ。『Orange』」

「え？また？」

私の兄はカフェを経営していて、夜はお酒も出す。

「いいじゃん。俺も行きたい」

目黒くんがそう言うならまあいいか、と思って唐揚げを頬張りながら、私が頷くと。

「よし、決まり！じゃあ各々定時に帰れるように頑張ろう！以上、解散」

ゆりちゃんがぴしって締めてくれた。

そうっと前の目黒くんを見たら、視線に気づいて、ん？って顔をしたから、慌てて首を振った。

同期の目黒くん。

口数は多くないけど、真っ直ぐで仕事に対して真面目ですごく熱くて。

もう2年、ひそかに片思いをしている。





・





超特急で午後の仕事を片付けて、社を出たら、ぱらぱら雨が降ってきた。

走り始めたら、後ろからゆりちゃんが、Aー！って追いかけてきて、折り畳みの傘を差し出してくれる。

「ねえ、そろそろ言わないの？」

「え？何を？」

「目黒に。好きだって」

直球の質問に、思わずつまづいて転びそうになる。

「い、え、え？」

「ばればれじゃん。好きなんでしょ？」

「……はい」

「やっぱり。私もばればれ？」

「え？」

「向井のこと、好きなの」

「え！ゆりちゃん、そうなの？ばれてなかった！」

「目黒鈍感だからちゃんと言わないと伝わらないと思うよ」

「んー…そう、かもしれないけど。私、『いいやつ』止まりなんだよね」

「何それ」

「仲良くはなれるんだ。友達として。でも、それ以上になれないんだよね」

「そんなこと…ないんじゃない？」

「そんなこと、あるんだよ。今まで好きになった人にはだいたい言われるの。『お前いいやつなんだけど』『女友達としては好きなんだけど』」


女としては見られない、って。


目黒くんに。


そう言われたくないなって思う。

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