短編集『恋日記。』【Ｎ】 (ページ10)

今日:8 hit、昨日:4 hit、合計:90,765 hit

-10- ページ10

「え？」

「へっ？」

自分で言ったくせに彼より自分がびっくりしている。

好きだと、恋情を零してしまった口を思わず抑える。

でも言ってしまった言葉を、

今更なしにするなんてことはできなくて。

「ねぇ、」

「い、今のは、忘れて？」

「は？」

「ご、ごめんね、いきなり…。困るよね、本当。」

そう言うことが、今の私には精一杯だった。

「あのさ、」

「今日は本当にありがと。

本当に助かった。それと、ごめんね。」

何か言いたげな彼の言葉を無視して、一方的に会話を終わらせる。

それ以上二宮くんの顔が見れなくて、

「じゃあ。」って言って彼に背を向ける。

絶対言わないつもりだったのに、知られてしまった。

彼に想いを寄せていることを。

もう図書室行けない…っ。

無我夢中に進めていた足をふと止めると、

瞳に涙の膜が張って視界がﾎﾞﾔﾎﾞﾔと滲む。

それはそんなに時間が掛からずに、

つー…っと、涙が頬を一筋流れた。

それが合図のように、透明な滴はﾎﾞﾛﾎﾞﾛ零れていった。

.