Letter45 ページ45
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Aが居なくなってから空っぽの家で放心状態の日々が何年か続いた。
立ち直るのが遅かった僕は、ある意味ころちゃんみたいに街を出た方が手っ取り早かったのかもしれない
そう思ったこともある。
ようやくAとの思い出を整理できるまで 心が落ち着いた頃、僕は遺書を見つけた。
彼女の死を認めたくなくてそのまま引き出しに閉まっていたのを思い出した。
丁寧に封筒を開ければ縦に細長い便箋が沢山あった。
僕が高校時代に見ていた便箋を思い出す。
その頃から彼女は死ぬ準備をしていたのかな。
早速読もうと思えばどうも1枚目と2枚目の話が噛み合わない。
文章が苦手なのは知っていたがここまで話が繋がらないほどの語彙力では無い。
「あー、なるほどね」
最後の最後にこう書いてあった。
『ころちゃんと合わせて読解してね!』
どこまで世話焼きな彼女なんだろう。
僕ところちゃんの仲まで心配していたのか。
そう思うと少し笑みが零れてくる。
「わかった、ころちゃんと話してくるよ、A」
僕は見たくもなくて非表示にしていた彼の番号をタップし、
…電話をかけた。
連絡先を消していなかったのはもはや奇跡だった。
┈┈┈┈┈┈
「いやぁるぅとくんから電話来た時本当にびっくりしたよ」
そして、今に至る。
僕らはあの桜の木の下で再会を遂げた。
Aの遺書を一緒に読解しよう。
そして、新しい1歩を踏み出そう。
僕はそうころちゃんに呼びかけた。
案の定彼もまだ遺書に触れていなかったようで、すんなり会うことが決まってしまった。
あれだけ関わりたくないと互いに憎んでいたくせに、
Aの事になると一緒になって乗り越えようとするんだね。僕らは。
きっと、昔からずっとそう。
今、僕の隣に腰を下ろしている彼は優しい表情で空を見上げていた。
僕はと言えばまだ相変わらず桜を破っている。
「今日は呼んでくれてありがとね。お陰でいい意味でAとの過去を忘れられそう」
遺書を通じて彼女の本心が今やっと僕らは分かった。
貴女はいつもひたすらにがむしゃらに生きていたんだね。
彼女の苦しみを汲み取ってあげられなかったのは僕らなんだ。
「どうしようるぅとくん、僕今どうしようもなくAに会いたい。謝りたいわ」
「僕だって会えることなら会いたいですよ」
小鳥は僕らの頭上を楽しそうに飛ぶ。
僕と彼も、あの鳥のように仲良くなれるかな。
あの頃の僕らに、また戻れるかな。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時