検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:77,119 hit

Letter37 ページ37




『ほら、泣くのはおしまい!るぅちゃんのご飯早く食べたいな私!』



「……ってAだってまだ泣いてるくせに」


あははっと笑う彼は瞳に何かを写してまた固まる。


「あれ、高校のアルバム見てたんですか?」

そう言って手を伸ばした先には。


『っ、見ちゃダメそれは』


アルバムの下には、遺書。


彼に私が自 殺しようとしていることを悟らせてはいけない。

私がそう叫ぶ。

『ほら、リビング戻ろ〜?』

「…うん」


まだ不安の残っているような顔のるぅちゃんを無理矢理部屋から追い出す。


彼が作ってくれたのはオムライス。
ふわっふわの卵がとても美味しかった。


……これが、私の食べる最後の夕ご飯。

一口ずつ丁寧に味わう。


「今日食べるの遅いですね」

『いつも以上にちゃんと味わってるから』


この愛が終わることは無い。
いつだって私はここに帰ってくる。


今度は、もっと強くなってるからね。



あっという間に深い夜になる。

時が経つのは随分と早いものだ。
きっと人生そんなもん。

『んー眠いなぁ』

もうすぐ私は永眠するのに。
睡眠欲なんていらないのにな。

「…明日は土曜だしゆっくり寝られますね」

『ねぇ。るぅちゃん』


いけない。

感傷に浸りすぎた。


死ぬ前に1番やっちゃいけないことをしてしまった。


思い出に浸ったら死にたく無くなっちゃうじゃん。


でも愛は欲しい。

どうして人間こんなに矛盾点だらけなんだろ?


神様はどうしてこんなに残酷なものを作ったの。



『……一緒に、寝たい、です』


きっと今顔真っ赤だ私。

また我儘で困らせてごめんね。


最後に貴方からの愛が欲しいなんて、どうせ消えるくせに狡いですか?


「……それは、そういうことでいいんですか?」


『……私を、愛で溺れさせて?』



ころちゃんと別れを決断した日にも
同じことをるぅちゃんに言った気がする。


本当に我儘な女。




「優しくなんて出来ない、ですよ?」


優しさなんて今の私に与えられたって仕方ないの。


カーテンを開けて、窓を見る。

私はガラスを挟んだ世界を見つめる。


月に光り輝く桜は、やはり美しかった。



『ねぇ、どうしてこの世界って美しいものほど残酷なんだろうね』



「…それは自分の事ですか?」


思わぬ返事に驚く。


「僕にとってはAは残酷なまでに美しい彼女ですよ。本当に」



"夜がずっとこのまま続けばいいのに"

初めてそう思った。

Letter38→←Letter36



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (169 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
135人がお気に入り
設定タグ:すとぷり , stpr , すとろべりーぷりんす   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。