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Letter16 ページ16



今目の前にいる彼は幼い頃からずっと一緒の男の子。

兄弟のいない私にとって彼は弟みたいで、可愛くて。


好きだった。
でもその好きの類は家族愛みたいなもの。

「Aちゃんあそぼー!」

「かまって!」

「僕をおいてかないで!」


いつも私を追いかけていた、君。



…いつからだろう。
私が君を追いかけるようになったのは。



「荷物持つよ」

いつの間にか私よりも大きくなった背。
私よりも大きな手。


サッカー部だった彼は私の後ろ姿を見つけては走って隣に並んではサッと荷物を持ってくれていた。

私が泣いていた時はずっと隣にいて泣き止むまで待っていてくれた。


……どっちが歳上なんだか。

しっかりしなきゃいけないのは私なのに。

君はずっと私を支えてくれたね。




「…またころちゃんの話ですか?」

「僕のことも見てよ」

「彼氏を頼れないなら僕を頼ってね?」

君の優しさに頼りすぎていた高校時代。

君なら、るぅちゃんなら、私の全てを受け入れてくれると思っていた。


……貴方が私に向ける好意の眼差しには気付かずに。



『え?今、るぅちゃんなんて…』

大学生になった私たちは少し遠いところまで足を運び
とあるカフェに入ってお話をしていた。


密かに死ぬつもりの私は、このままどうなるのか
だけを聞いた。

「…だから、僕と結婚しよう、って」

目の前の幼馴染は顔を赤く染めていた。

『…!?』


今日まで知らなかった。

るぅちゃんが私に恋愛的(・・・)な意味での好意を向けていただなんて。

『いつから、私の事』


「…多分、中学の時から、ずっと好きでした」


背負いきれない程の罪悪感に襲われる。

今まで私は好意に気づかずに、それを利用して…!?

「あっ、いや違うんです!告白できずにいた僕が悪いから…」



なんならAの不幸に漬け込んで今想いを打ち明ける僕の方が何倍も醜い男です。

目の前の彼はそう言うけれども。

『るぅちゃんごめんね、私ってば…』

ただの幼馴染だから何言っても平気だと思って。
秘密話も、未だやっぱり好きな彼の惚気話も。


全部るぅちゃんにだけ聞かせてきた。


なんて残酷な女。

「A、僕ならそんな悲しい顔させないよ」


そう言ってキスする貴方に溺れる権利が、

今の私にあるのだろうか。

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作品ジャンル:恋愛
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時

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