Letter11〜大学生の私〜 ページ11
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「おかえり〜」
今日はどうだった?と首を傾げるころちゃん。
『別にいつもと同じ』
あれ。私なんで冷たくしてるんだろう。
「…どうしたのA?」
大きな瞳を潤ませて私の腰に抱きつく。
いつもなら可愛い、とかもっと愛の籠った反応ができたはず。
『関係ないでしょ。くっつかないで。お風呂入ってくる』
「あぁちょっと!」
…ぴちゃん。
湯船に漬かりながら彼との同棲生活を振り返ってみる。
進学して春を超え、今は7月。
同居から1年が経っていた。
交際開始からは3年以上は経っている。
何を今更私はイラついているの?
分からない。考えれば考えるほど頭が狂う。
もうムシャクシャにシャンプーをし、髪をいたわるという女の使命すら忘れ、掻き乱す。
『…何なの。うざっ』
テレビを見ている彼にもイラつく。
寝ている彼にもイラつく。
大学に行く彼も嫌。
…何もかも嫌。
「A休んだら?最近調子も良くなさそうだし」
『は?私は普通だけど?あんたこそ頭おかしいんじゃない?』
自分が理不尽にキレていることも分かるの。
なのにころちゃんがなんだか嫌になるの。
なんで?なんでよ。なんで!?
「…今日はるぅとくんとご飯食べてくるから、ごめんね。早く帰るよ」
寂しくそう言ってドアを閉めて出ていく彼。
その背中は疲れているように見えた。
全部私のせい。知ってるよ。
スマホを開けば沢山の病院の先生からの着信。
『もうやめてよ、名誉の為だけに私を使わないで』
その電話が私への忠告
────────言わば、
余命宣告だったなんて、知るわけないじゃん。
両親が私の人格変化を病院に通告してるなんて、知るわけないじゃん。
「あの子なんだか最近イライラしてて!親の私に対しても随分ひどい有様で…!」
母がそう告げた
「やっぱりか」
医者は納得したように両親を見るの。
そして告げる。
心して聞いてくださいね。
彼女、八峰 Aさんは、
余命X年です。
『ころちゃん帰ってこないし!浮気なの!?』
『飽きちゃった?素直で可愛い女でも見つけた?』
自分は愛さないくせに彼からの愛だけは求めていた私。
その頃の私は1人でムカついて家の物を喚き散らしていた。
このイライラの原因が病気のせいだって知るのは、私がるぅちゃんと浮気する少し前の話。
許されない罪を持った。
遺書を綴る私は今になってやっとそう思う。
死ぬべき人物は私一人だった。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時