恋レシピ〜How to make LOVE?〜No.5

好きじゃないのか、好きなのか。 ページ9

……それはそうだけど。




玉「聞くくらい、いいじゃん」




藤「ほら……」




ガヤは目だけでAちゃんを見たから、それにつられるように俺も彼女を見た。




藤「……困ってるから。好きな奴にそんなこと聞かれて嬉しい子がいると思うか？やめろよな……」




……本当だ。


彼女の瞳には、うっすら涙の膜が張っていて。


その原因が自分なのかと思うと、グサリ、と胸に棘が刺さる。


……でも、止まらない。




玉「やめないよ」




藤「……はぁ？」




ガヤは苛立ち全開で、俺の発言に眉をひそめた。


止まらない……というか、止められない。




玉「だって気になるし……デートのことも、Aちゃんのことも」




心の奥底のキモチは、失恋の痛手を癒してもらうとかそういうんじゃない。


涼さんの代用とも全く違う。


ただ……純粋にAちゃんに興味が沸いたんだ。




どんな事で笑うのか




どんな時に幸せを感じるのか




どんな怒り方をするのか




どんな風に泣くのか……




彼女を、もっと深く知りたい。




固まって何も言わないAちゃん。


どういう意味合いか分からないけど、彼女はまた目に涙を浮かべている。




玉「え！ちょっと！！何で泣くわけ？！」




A「まっ……て……ちょ、ごめん……」




膝を抱えて、顔を埋める。


グスン、という音が聞こえて……


やっぱり、泣いてる。




藤「……A、良かったな。じゃ、俺……帰るわ」




膝に顔を埋めて動かないAちゃんの背中を、ガヤは優しげな手で撫でてあげると、すっくと立ち上がった。


部屋を出ていく時、一瞬だけ見えたガヤの横顔が、今まで見たこともないくらい酷く哀しそうで。




これも……俺のせい、だよな。


だけど、自分に正直になるって決めたから仕方ない。


と、自身に言い聞かせてる俺の前を、風のように通り過ぎた。




目の前を駆けて行ったのはAちゃんだと分かったけど……


彼女の目的は何かと分かるまで、少しだけ時間が必要で。




A「藤ヶ谷くん……っ」




ガヤを呼び止める彼女の声が、俺の脳内を占領する。




……藤ヶ谷くん？




Aちゃんが何故、ガヤを追うんだ？？


部屋を出ていく彼女をぼんやりと眺めては、言葉にならない想いと葛藤を繰り返していた。




………好きじゃないのか。




………好きなのか。

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