２１１：隠し事 ページ6
「どうしました？浮かない顔して。」
食堂でお弁当を食べる気にもならず、ため息をこぼしたら向かいに座る美香ちゃんに突っ込まれた。
「ん〜？何でもないよ？」
「そうですか？」
「うん。アノ日で…ね？」
「あ〜気分落ちますよね？」
頷く私に納得した様に笑って答えた美香ちゃん。
私は再びお弁当に視線を戻す。
社食は量も多くて、油っこい物が多くて苦手。
だから、私はお弁当を持って来てて翔くんのも週に２、３回は作ってる。
「今日はお揃いのお弁当ですね？」
隣の列のテーブルに座る翔くんの手元を見たのか、からかう様な楽しげな声がする。
「うん。」
「すっかり新婚さんみたい。羨ましいなぁ。あんな人が彼で同棲なんて。」
毎日、一緒に出勤してたら私達から言った訳ではないのに、いつの間にか社内に知れ渡ってた。
まぁ、翔くんモテるし…。
「ふふふ。そ？」
「はい。」
「美香ちゃんも彼いるじゃない。」
「いますけど…櫻井さんみたいじゃないですから。」
「でも、好きなんでしょ？」
「はい。もちろん。」
にっこり笑って頷く美香ちゃんが可愛いくて。
「私も別に外見で好きになった訳じゃないのよ？」
「ふふふ。わかってますって。櫻井さんのAさんを見る目がハンパなく優しくて大事にされてるんですね？」
「…うん。」
多分ね…？
最近、翔くんの様子がちょっとおかしくて。
夜中にふと目が覚めるとベッドに居なかったり、リビングから話し声が聞こえたり…。
あんな事があって直ぐだし、浮気とかそういう類ではなさそうだけど、何か隠し事されてる様な…。
私に言わないって事は、私が知る必要のない事なんだと無理やり思う。
「あ〜ぁ。Aさんが結婚したら私、あの部署で独身ひとりですよ？」
パスタをフォークでクルクルしながら、ため息をつく美香ちゃん。
「私も、直ぐに直ぐそんな予定はないよ？」
『待ってて』とは言われたけど、プロポーズされた訳じゃないし。
「そうなんですか？」
パッと顔を上げた美香ちゃんの目は『信じられない』って言ってて。
「うん。いずれは…ってくらい。」
って苦笑いで返す。
「でも、意外です。櫻井さんってそういうのしっかり考えてそうだから。」
「どうだろうねぇ。結構ヘタレさんだよ？」
やっぱり苦笑いの私を見て、
「Aさんにはずっとよくしてもらったし、幸せになってもらいたいな。」
って優しく微笑んで言ってくれた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
