２２９：ずっと同じ道 ページ24
翔くんの真剣な目に見つめられて、身体が固まった様に動かない。
「うん。今日言おうってずっと思ってた。」
「ん？」
身体ごと私の方に向けた翔くんが、ポケットから繋いでた手を出し、反対の手もギュッと握り締められた。
相変わらず翔くんの真剣な目は私を捉えて離さないでいて。
「A？」
「ん？」
「俺と…
結婚して下さい。」
頭が真っ白になって、意味も無く瞬きを繰り返す。
「必ず幸せにしてみせるから…俺と一生涯、ずっとずっと一緒にいて下さい。」
返事をしたいのに出るのは声じゃなくて涙だけ。
そんな私を困った様に眉を下げて見つめて、パッと繋いでいた手を離した翔くんがポケットから小さな箱を取り出して。
中身を私の左手の薬指に嵌めてくれた。
「もう、NOの返事は聞かないよ？」
って笑って言って私をギュッと抱きしめる。
「A？返事は？」
低い甘い声が私の耳元で聞こえる。
「…はぃ。よろしくお願いします。」
私が涙声のか細い声で返事をすると、痛いくらいにキツくキツく抱きしめられる。
翔くんの背中に回した腕に私も力を込めて応える。
「絶対…絶対に幸せにするから。俺、頑張るから…二人並んでずっと同じペースで、同じ道を歩いてこ？」
もう…
本当に…
涙が溢れて止まらなくて、頷くだけしかできなくて。
「来月の１月２５日。俺の誕生日に俺のお嫁さんになって？もう、それだけで一生、誕生日プレゼントはいらいないから。」
「…ん。」
少し身体を離した翔くんが私の顔を覗き込み
「はは。泣過ぎでしょ？」
って言って涙を拭ってくれる。
「だってぇ〜。」
「うん。今日は許すよ。」
優しく微笑む翔くんが冬の満天の星空の下、今までで一番優しいキスをくれた。
冷たい唇の感触を私は一生忘れないと思う。
唇を離した翔くんはやっぱり優しく微笑み頭をポンポンしてくれた。
「さて、宿に帰って誕生日パーティーしよっか？」
「うん？」
「俺がAの３０歳の記念すべき誕生日をお祝いしてあげる。」
って言って、私の右手だけを握って立ち上がる。
「…もう十分だよ。」
「プロポーズと誕生日は別物でしょ？独身最後誕生日とイブを楽しも？」
私の手を引き、車まで戻るとロックを解除して助手席のドアを開けて車に乗せてくれる。
運転席に回った翔くんが、エンジンをかけて車を発進させ来た道を戻った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
