１５５：王子様のキス ページ30
遠くで聞こえる翔くんの私を呼ぶ声。
「A？A？」
って切なげな声で何回も…
それが夢なのか、現実なのか…。
「A？ね？俺！わかる？」
うん…わかるよ…
「…しょ…く…。」
「A？！ねぇ！！」
身体を揺すられてる。
裕「バカ！身体揺すんな！」
隆「翔！冷たい水買って来たぞ。」
「あぁ。」
唇に翔くんの感触…
唇の隙間から流れ込んくる冷たい水。
冷たい…
気持ちいぃ…。
「A？もっと飲める？」
「…ん。」
かろうじて返事をすると唇に翔くんの感触。
流し込まれる水をひたすら飲み込む。
「A？A？」
翔くんの私を呼ぶ声が段々近くなってくる。
「ね？A？わかる？」
そう言った翔くんの感触がまた唇に…
けど、水は流れてこなくて。
優しく唇が押し付けられてる。
裕「おま！ドサクサに紛れて何してんだよ！」
「ぃってぇ。」
篤「ははは。王子様のキスってか。」
麗「翔が人前で平気でキスって…。」
あぁ…
この人の声は聞きたくない。
隆「目が覚めないし、王子様のキスじゃなかったらしいぞ？」
王子様…？
そんな事よく二宮さんも言ってたな。
「A…。」
泣きそうな、切ない掠れた声で呼ばれて…
翔くんが泣いてるって思って薄っすら目が開く。
視界にはボヤけてるけど潤んだ目の翔くん。
「A？！」
「ん…？」
裕「ははは。やっぱり王子様だったわ。」
「ね？俺わかる？」
「ん。翔くん。」
「…マジで…よかったぁ。」
ギュ〜ッと抱きしめられる。
「俺…心臓止まるかと思った。」
「翔くん？苦しい…。」
「ちょっと我慢して…。」
裕「我慢できるかって！」
「いってぇ！何だよさっきから！」
裕太さんに頭を叩かれたらしい翔くんは、私から身体を離して後頭部をさすってる。
裕「Aさん？もう大丈夫？」
上から顔を覗き込まれて聞かれる。
「はい。何だかご迷惑をおかけして申し訳ないです。」
場の空気をめちゃくちゃにしちゃったからな。
この前の４人以外の顔は怖くて見れない。
「いいんだよ。Aは悪くない。全部俺の責任。」
裕「なんだ、わかってんの？」
「あぁ。」
私の頭を撫でる翔くんを見上げると涙がこぼれ落ちてしまいそうなくらい潤んでて。
「ごめん。」
って小さく呟いた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
