affabilmente ページ6
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窓から風が入ってきて、
先生の暖かい茶色の髪の毛が揺れる。
目の前に座る、夕陽に照らされた先生は、
優美、という表現が似合う。
ここまで近くで見たのは初めてで、
その表情に戸惑ってしまう。
｢さっそくやけど。第一志望が、聖東音楽大学やんな？｣
「はい」
「小湊さん、楽器は？」
「トランペットです」
そう言うと、中間先生はふふっと笑った。
不思議に思っていると、先生は笑ったまま言う。
「まあ、知ってんねんけど、トランペットやって。
俺もトランペットやったし、
賞取ってれば俺の耳にも入ってくるし」
「先生もトランペットやったんですね」
「最近は全然吹けてへんけど、一応な」
この人はどんな音を奏でるんだろう。
音楽家は、独特な雰囲気を持つ変わり者が多い、
というか、まともな人は殆ど居ない。
上手ければ上手い程に。
一緒に居るだけで、
不思議な空気感に包まれるような。
他人をそんな感覚に陥らせるこの人も、
きっとそんな音楽家の一人で。
今まではただの「関わりの無い先生」だったけれど、
この教室に入った瞬間から今までの、
一つ一つの動作や言葉、表情が。
彼の印象を、他の先生とは違う、
「音楽家」に変えていた。
そんな中間先生の持つ音に、純粋に興味が湧いていた。
「副科は？」
「ピアノです」
「お、副科まで一緒やね」
「そうなんですね、すごい偶然。
でも、ピアノはあんまり自信なくて」
「ええよ、俺も教えるし」
「え、でも」
「音楽の先生、やからな」
柔らかく微笑む彼の目尻に皺が浮かぶ。
とても優しい表情。
きっとこの人は、柔らかくて、
木管や弦楽器にも溶け込めるような、
そんな音を持っている。
勝手にそんなことを思いながら、
先生の笑顔を見つめていた。
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作者名：みなみ | 作成日時：2019年5月3日 11時
