遠回りの恋

恋・34 ページ34

… パタン。




…




「はい、これ お前のスリッパ」




私のスリッパ…




カチャン…




藤ヶ谷君は、飾り棚のトレイに鍵を置いた。



キョロキョロと周りを見る…



新築独特の香りが鼻をくすぐる。



「早くこ〜い！」



あ…



「うん」



廊下を進み、リビングに入った。



「前と同じ１LDKだけどいいよな？」



前のマンションより狭いってココだったんだ…


確かに狭いけど…



「庭がある… 」


「ああ、DIYやりたいかな？って思ってさ」



２人で庭を眺めた。



「嫌？ココ？」



店が見える…



駅も近い…



…



「ねぇ、ココ、お家賃いくら？」


「え！？」



藤ヶ谷君が急に焦り出した。



「いや… その… 」



ごにょごにょ家賃を言った。



「高いね… 」



新築だけあって高い。



「いや… ２人で… 」


「でも、シェアすれば安いね」



そう言い、にっこり笑った。



目をパチクリパチクリ。



「い… いいの？」



ふふっ… 可愛い。



さっき『 俺たちの家 』って言ったくせに。



「嫌なら一人で住んで。私、別の所探すから」


「ダメ！！」



出ました！



藤ヶ谷君十八番の『 ダメ！！ 』




「あ… 」





ぎゅうぅぅ…




…





「良かった… またダメだと思った」


「ごめんね… 」




私を抱きしめながら首を振った藤ヶ谷君。


抱きしめ方が苦しいけど 嫌じゃない。



「ずっと こうしたかった… 」


「うん… 私も」



ゆっくり藤ヶ谷君の背中に腕を回した。



「本当に悪かった… 傷つけてばかりで ごめん」


「でも、俺… ああするしか思い浮かばなくて… 」



うん…



「お互い不器用だもんね… 」


「ああ、遠回りしてばっかだったな」



おでこをくっつけ、くすっと笑った。




やっぱり… 好きだな、私…




あ…




「ん… 」




…





…




恥ずかしい…




２４にもなって初キス。




あまりに恥ずかしくて下を向きっ放し…




「A」




はっ！！




ちゅ。




「慣れて？」



うわわわぁああ！！



「ひゃああ！！」


「こらこら、逃げるな」



ジタバタする体を抱きしめられた。



「もぉー！初心者なんだから手加減して！」


「それは無理。俺がどれだけ我慢してたと思う？」




なっ！？




知らないわよー！！そんなことー！！




「もう… シー… 」




指が私の唇に優しく触る。




ゆっくり瞳を伏せ また唇同士が触れた。

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