▶マッドスマイル (ページ31)

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笑顔が30こページ31

元々はAとグルッペンは貴族出身であり、お互いの家はかなり交流関係が深かった。
グルッペンは幼少の頃から顔が整っており、周りから何かと顔で褒められることに嫌気がさしていた。グルッペンの家はよくAの家にお邪魔しては交流をしていたが、お互い消極的な性格であったため、特に会話もなく過ごしていた。ちなみに小学校も一緒であったが、一言も話したことはなかった。
小学校も高学年に差し掛かろうとする頃、いつも通りグルッペンは親に連れられ社交パーティーへと連れ出されていた。人混みが苦手なグルッペンは部屋の端で早く終わるのを待っていると、普段は話さないAがこちらに話しかけてきた。

『グルッペン君だよね？こんばんは』

おずおずと話かけてくるAに素っ気なく返事を返す。自分が見てもわかるくらいの作り笑い。他の奴と一緒かとグルッペンは落胆した。

『グルッペン君ってとても綺麗だよね』

愛想笑いで告げる彼女。あぁまたか。そうやって外側を見て俺を判断するのか。
そう思ったグルッペンはAを無視して踵を返す。Aはその場から動くことができずに服の裾をぎゅっと握っていた。
また次の社交パーティー。性懲りも無く愛想笑いでAが話しかけてきたため、思わずグルッペンは中庭へと走り出した。
普段Aは執着しないタイプであったが、その時は追いかけないとという使命感に駆られグルッペンの後を追う。
中庭に辿りつくと二人は肩で息をしながら立ち止まる。

『グルッペン君……この間はごめんなさい。でも、ちゃんと伝えたくて……』

Aは拙いながらにこの前なぜグルッペンが綺麗だと思ったのかを語り出す。背筋がしゃんと伸びていて、自分の考えをしっかりと持って生きているように思えたと、それがとても格好良く、そして綺麗に見えたと必死にAはグルッペンに伝えた。
グルッペンはAが本心からそう言ってくれていると感じだ。しかしそれだけでは、幼い彼の心を簡単に開くことはできなかった。

gr「じゃぁ変顔して見せろよ」

突拍子もないことを言うグルッペン。自分に近づいてくる者は自分の味方ではないという無意識に芽生えた感情が、素直になるという扉を固く閉ざしているがゆえの言葉だった。