一分間の恋人。＊桃＊ (ページ8)

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八分間。ページ8

そんなこんなで久しぶりに家族で喋っていたら、長いと思っていた時間もあっという間に過ぎていった。もう一時前だ。

家族のみんなとは違う嬉しさが出てきた。

「私、飲み物買ってくるね。」

少し申し訳ないけど、「彼氏(仮)と電話してくる」なんて言えないから嘘をついた。

「それなら俺が行くぞ？Aは母さんと映姫と話してていいから。」

「いや、私が行くよ。大丈夫。すぐ終わるから待ってて？」

「そうか？」なんて言うお父さんを必死に納得させる。
約束守らないのは何よりも嫌だからね。

「気をつけてね。」

「うん。」

見送ってくれるお母さんに心の中で感謝した。
ドアを開けて公衆電話へ向かおうとしたとき、手をなにか暖かいものに包み込まれた。

「姉ちゃん、俺も行く。」

「ううん、映姫、大丈夫だよ。お母さんたちといな？」

「でも、」

「ほら！ちょっと待ってるだけだから、ね？」

「…うん。」

「いい子。」

気を取り直して玄関へ足を進める。

…あっぶなかったぁぁー
着いてこられてたらまともに電話できないよ。

･

「Aも青春してるのねー、良かったわー。」

「ああ、そうだな。」

本当に幸せそうにする母さんと父さん。
前、聞いたことがある。

『A、ごめんね、外にも出してあげれなくて。』

『大丈夫だよ、私はみんなが来てくれるだけで嬉しいから。』

『…ごめんな、寂しい思いさせて。』

『…うん。』

その時の状況が分からなかった僕は、
『姉ちゃん、母さん父さん、どうしたの？大丈夫？』なんて聞いた。

姉ちゃんは少し浮かんでいた涙を拭って僕に笑顔を向けてくれた。

…だからこそ、姉ちゃんが心配なのだ。

「…母さん、僕ちょっと行ってくる。」

「ちょっと、映姫！？」

後ろから聞かれる母さんの声が気付かなかったフリをして走った。
姉ちゃんをこのままにしたら、僕たちの前から気付かぬうちに消えてしまう気がした。

＿＿＿＿＿誰かに取られてしまう気がした。