一分間の恋人。＊桃＊

七分間。 ページ7

約束の時間は午後一時。診察が終わってからかなりの時間がある。
読書でもして時間をつぶしていた。

物語が四分の一まで差し掛かる頃、ばたばたと廊下を走るような音がした。
ドアが開き、顔を覗かせたのは…


「姉ちゃん！」

「映姫(えいき)！久しぶり。」


弟の映姫。名前に「姫」という漢字が入っている。その通り可愛い性格してる。
本人は気にしてるらしいけど私は映姫のそういう所好き。


「お見舞い来たよ！」

「ありがとう。嬉しい。」


無邪気な笑顔になってから大きな荷物からごそごそし始めた。


「あ、あった！姉ちゃん！これあげる！」

「映姫ー、廊下は走っちゃダメだろー？」

「だって姉ちゃんに早く会いたかったんだもん！」


果物とお花のセットをキラキラした目で渡してくる。
と同時にお母さんとお父さんも来てくれた。


「A、安静にしてる？」

「私そんなに動き回らないから」


久しぶりに話せて自然と笑みがこぼれてしまう。


「A彼氏はできたの？」

「姉ちゃんに彼氏！？！？」


ギクッ…
これっていることになるのかな…


「ま、まぁいるかなぁ…」


だんだんと声が小さくなってしまった。違和感ありすぎたかな…
心配になって顔をゆっくり上げると、お母さんはぷるぷるしてた。

私が嘘ついてると思って怒ってるのかな…


「まあ！良かったじゃない！今度紹介してちょうだいね！Aの旦那さん！」

「だ、旦那さんって…」


どうやら杞憂だったみたい。誰よりも嬉しそうに話してた。
なんか悪いことしちゃった気分。


「姉ちゃんに彼氏…ありえない…」

「映姫、聞こえてるからね。」

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