一分間の恋人。＊桃＊

十二分間。 ページ12

毎日のAさんとの電話は嬉しい。
だってAさんのこと知れるし、Aさんの好みに近づけるから。

でも、さっきの電話。ちょっと凹むなあ。

俺のこと名前で呼んでくれるのは嬉しいんだけど、「百瀬さん」呼びから「さとみ(くん)」呼びにして欲しい。

好きな人から出る自分の名前って特別。

距離感考えた方が良いのかなあ。

でも距離感とか考えてたらいつまで経っても関係は変わらないままだろうし、どうしたらいいんだか。
やっぱ恋愛って難しい。


「…あ！Aさーん！」


後ろから大きな声を出すわんわんの声が聞こえる。

“Aさん”という単語が出て、首もげるんじゃないかってくらい勢いよく振り向いた。


「ぷっ、あっはは！さとみくんおもしろ！」

「は？だって莉犬今Aさんって…」

「ちょっと、やめてって！これ以上は…お腹が死ぬ〜！」


お腹を抱えて笑い転げる莉犬。
俺、もしかしなくても馬鹿にされてる…？


「はー、はー…だってさあ、さとみくん。」

「？」

「俺がいた方キッチンじゃん！こんなとこ誰もいないよ！あはははは！！」


…確かに。

俺はなんて馬鹿なことしたんだ。このわんわんにここまでされるなんて…。

“恋は盲目”とはまさにこの事だな。恥ずかしい。


「さとみくん嬉しそうな顔したり難しい顔したりしてさ、Aさんのことかと思って名前呼んでみたら図星だったとか！こんな事ある！？面白すぎ〜！」

「いつまで笑ってんだくそ。」


少し頭をこずくと「痛っ！」と頭を抑える。

そんな強くやってねえわ。


「さとみくんもまだまだ若いですなあー。」

「うっせ。二度とこんなこと言わせれないようにしてやる。この、マリカでな！！」

「俺だってやってやる！」


莉犬の気を紛らわせようとゲームを提案した。

まんまと引っかかった所はやっぱり犬なんだよなあ。

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