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「ああアッ!」

女性が、喘ぎ声にも似た歓喜の絶叫を上げて注目を集めると、下卑た視線に晒されながらついに服を脱ぎ始める。上から下へと少しずつ。そして全てをその辺りの床へと放ると、近くのソファに跨って腰を振りだした。

客たちから歓声が上がって、程なくして、お前の番だぞというように注目が私へと移った。

店中に広がる甘ったるい匂い、耳を刺激する大きな音楽、たくさんの下品な目。頭が痛くなってきた。それでも仕事を円滑に進めるため、仕方がないのだ。自宅以外ではほとんどの間、化粧で傷をある程度ながらカバーして隠している。この暗さなら変に思われることもないだろう。

一緒に来た男に、腰をぽんっと叩いて促される。

控えめに、薄い羽織を脱ぐ。それだけで隣から荒い息が漏れだす。少しずつ、時間をかけて下着姿になる。ごくりと嚥下の音が聞こえてきて、ため息が零れそうになるのをなんとか堪えた。

そして、とうとうブラジャーのホックを外し、肩ひもに手をかけた。

そのときだった。



「そこまでだ!」

少々裏返った声が聞こえて振り向くと、出入り口付近にぞろぞろと人が集まっている。その中心に銀髪を揺らす青年が立っていた。

「武装探偵社だ!市警も来ている、観念してその場を動かないでください!」

その一瞬、僅かに時が止まって、次の瞬間にはパニックが訪れた。

悲鳴を上げる女たち、誰が漏らしたのだと怒号を上げる男たち。次々に取り押さえられ、裸の女性たちは保護される形でバックヤードへと誘導されていく。

予想外の出来事に放心していた私も近づいてきた銀髪の男に気が付いてさっと上着に包まると、真っ赤な顔で彼が立ち止まった。

「す、す、すみません!見るつもりは……!」

「いえ……」

俯きながら答える私に男はあたふたしたままで、それを見兼ねたのか近くに居た蝶の髪飾りを付けた女性がこちらへと向かってくる。武装探偵社の中島敦と与謝野晶子だ。心の中で唇を噛む。どうにかこの場所から抜け出さなければ。

「大丈夫かい?意識はあるようだけど、これ何本かわかるか」

指を立てて振る彼女に小さく、三本と答えると驚いた顔をされた。

「あんたは薬を飲んじゃいないみたいだねェ。周りが怖くて脱いだ口か。……怖かっただろう。さあ、来な」

あ、ちょっと。そんな私の声も無視して肩を抱いたまま歩き出した与謝野に、私は眉を下げて、まるで被害者のような顔をしたまま着いていく他なかった。

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雨雲り(プロフ) - とても好きです。占ツクでここまで引き込まれる作品に出会えたのは本当に久しぶりに感じます。作者さんの事情もあると思いますが、更新楽しみに待ってます。 (2021年8月31日 4時) (レス) id: e92c8698d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:仮名子 | 作成日時:2021年8月14日 19時

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