標準語が恋しくなった２【宮侑】 (ページ2)

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「あっつ。ここ、あっつ」

「あつかれー。倫ちゃん」

「おつー」

ギャルみたいな挨拶を交わし、角名くんがエプロンをつける。

「ひもが結べない」

「結んであげようか」

「たのんだ」

一旦人足が退いたところで、角名くんのエプロンのひもを結んであげる。

「角名くんがたこ焼きやるの？」

「まぁ、宮本さんやけどしそうだし」

「しない……よ、たぶん」

「何その間」

尾白先輩が焼いてくれたたこ焼きの余裕があるため、お客さんが来るため少しの談笑。

どこ行きたいか、とか治くんがどうとか。

笑いながら、食券を手で弄んでいるとすみませーんとかわいらしい声が聞こえてきた。

「はい、何にしますか？」

「……部員やないの？」

「たこ焼きは部員が作ってます」

「そういうことやないし」

アイドルなのか、うちの部員は。

さっきまで空いてたのに、お昼時になってきたからかぼちぼち列ができている。

さっさと頼め。

「何にしますか？」

「普通の」

「どうぞ」

「……調子のんなや。ブス」

「お渡しはあちらです」

夏休みからだよね、たぶん。

全国に行って、月バリや地元のテレビ局で新体制のバレー部が注目されるようになってからだ。

クラスだけじゃなくて、学校全体の女子が敵らしい。

でも、私だけシフトに入らないのもおかしな話。

次に来た女子学生にもにらまれるし、角名くんファンらしき人にはさっきのを見られてたのか食券を取るときに指切った。

乱暴なんだって。

地味にいたいからやめてほしい。

絆創膏あったっけ。

さっきの子を横目でにらむと目が合う。

え、何。

にやりと笑ったその子はもう一度こっちの列に並び直した。

「これ」

ソースと書かれた紙きれを机に落とす。

「血、ついてるんやけど。食品として……あかんやろ」

「すみません」

食品ではないけどな。がんっと机の脚をけられる。てか血はあんたらのせいだから。普通ならつかない。

「部員は立って頑張っとるのにマネージャーはすわっとるん？」

立って、謝れということだろうか。

ここで騒ぎになられても困る。

立ち上がろうと、腰を上げた瞬間に、肩に強い衝撃が走った。想定していなかった事態のせいで、バランスを崩した。運悪く、椅子の足につまずく。

「……いった」

「ぷっ、だっさいわぁ」

こっちは騒ぎにしないようしてやってんに。

……きれそー。